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探偵と刑事と狂気の沙汰・二△
愛おしさと気持ちよさが相まって、さらに勃起してしまった。
「エ、エドの、おっきくなってるよ……っ?」
シドが慌ててそう言うのを聞きながら、おれはなんとかぶっ飛びそうになる理性の糸を握っていた。手を放したら、風船みたいに飛んでいってしまう。
「ごめんなさい、シド。でも、大丈夫ですよ」
なんの根拠もなくそうささやいて彼の立てた膝にキスすると、シドがへらりと笑った。
「ん、だいじょぶ」
初めてでそんなこと言えないはずなのに、包みこむような笑顔で言ってくれる夫の懐の広さに涙する。おれは泣きながらもう一度腰を進めた。
「くぅっ」
シドが息を吐く。心なしか、声に痛いのとは別の感情が滲みはじめているような……。おれはシドから教えてもらったことを忠実に守ろうとした。男のGスポットは、前立腺にあるんだって。たしかに、おれはそこを責められると潮を噴いてしまう。全身がじーんとしてしまって、ペニスでイくのとは違う気持ちよさがある(そしておれはそこを責められるのが好きだ)。もっと奥には、もっと痛くてもっと濃厚に狂う場所がある。おれはそこを掘られるのも大好き。ただ、おれのペニスのサイズじゃシドのそこを突くのは難しい気がする。それに、まだ初めてだし。
ということで、前立腺を狙うことにする。そろそろと怒張を進めながら、同じ場所で、入れた状態でキープ。気持ちよくて腰を振りたくなるけど、我慢。シドの中、あったかい。
「ど、どうですか? 痛いですか?」
入れた状態で、シドのちんこを擦りながらささやくと、彼は「ん」と低い吐息を漏らした。
「いたくない……でも、すごい圧迫感。腹が苦しい」
「最初はそうです。我慢できなかったら抜きますよ」
「だいじょぶ」
そう言いながら、シドはぎゅっとシーツを握っている。我慢してくれているんだろうなと思うと、胸が熱くなる。早く気持ちよくしてあげたい。
そのまま、慎重に掘る。ゆっくり腰を前後させ、吸いついてくる肉のひだを掻き分けて奥へ。
「んぐっ」
シドがむせて、おれは腰を止める。アルコールでぼんやりした目の端に涙。
「ごめんなさい! い、痛かったですよね?」
謝ると、あの人は朦朧とした目でおれを見上げてつぶやいた。
「いや……思ったんだが、違う体勢のほうがよくないか?」
そこでたしかにはっとする。おれたちは、いわゆる正常位。そうか、顔が見えないと不安だと思ったけど、どうせならバックのほうがやりやすいんじゃ……。
そんなことを考えるおれに、あの人は言い放った。
「よし、ぼくが乗る」
え? と思う間もなく、「抜いて」と言われて大人しく自分を引き抜く。シドはまた危なっかしく体を起こすと、おれをベッドに押し倒した。腰の上に跨る。まさか。いきなり騎乗位?
「こっちのほうがやりやすそうだ」
そう言ったあの人の顔が狼のようににやりと微笑む。薄青い目は、いつもの欲情したときの癖で据わっていた。
「いただきます」
思い切り肉食獣のセリフを吐いて、あの人はおれの勃起したちんこにケツの穴を押しつけた。
ずぬっ……とおれのモノがあの人の中に飲みこまれていく。そのとき、おれは今までとは違う感覚をはっきりと感じた。初めから気持ちいい。狭い肉の筒を割り開いていく快感。吸いついてくるそれにめちゃくちゃにされる快感。
「ん……っ」
思わず声が出ると、シドはおれを見下ろしてにやりとした。ぐっと腰を落とす。直腸はうぞうぞと動きながら、おれを包みこむ。
「は、っ」
シドは息を吐き、脚をつっぱって腰を止め、自分にとって苦しくなく、いいところをキープしている。たしかに、こっちのほうが体勢的にはいい。おれも、彼がリードしてくれてほっとしていた。仰向けになってシドの腰をつかみ、片手で彼のペニスを包み、扱く。
シドを受け入れるようになって、最初のころは彼がよくこうしてくれてたんだ。緊張とか痛みがまぎれるようにって。それを思って、丁寧に優しく擦る。すると、中の緊張も緩んでくる。そのぶん、シドの中はおれにキスするようにまとわりついてきて……あったかさも相まって、おれはまたでかくなっていた。
「んっ、お、おっきいよ、エド……っ」
そうささやいて、太い幹のように安定感のある腰をくねらせるシドに、おれの理性ももう限界だ。腰を抱いて、両手で彼の引き締まった小さな尻をつかむ。揉むと、シドが奥におれを飲みこんだ。ぎゅっとまとわりつかれる。シドは腰を上下させ、こんどは前後に揺する。
そのとき、おれは少し硬い感触を感じた。自分で自分のものをして、覚えがある感触。もしかして、と思って、そこを狙って腰を突きあげてみる。
「ん……っ」
シドは声を殺し、背中がぴんと反った。逞しい太腿がぷるっと震える。やっぱりここだ。
「シド」おれは彼の太腿をつけ根に向かって撫でながらささやいた。「そこ、おれのちんこに擦りつけたら気持ちいいですよ」
「こ、こう?」
シドが腰をくねらせて、おれのものに中を擦りつける。あきらかに表情が変わった。直腸がぎゅっと締まる。
「どう?」
おそるおそるささやくと、あの人は緩んだ顔でおれを見た。口の端から唾液が垂れている。腰を上下させてぬこぬこおれのものをしゃぶりながら、「いい」と言った。
「いいよ、エド、ここ、いい……っ」
きゅんきゅん締めつけられて、おれも最高だ。入れるのがこんなに気持ちいいなんて思わなかった。シドの腰を抱いて尻を揉んでいると、あの人は勝手に中を擦りつけてくれる。おれがちゃんとリードしなきゃと思っていたから、ちょっとほっとしたような、残念なような。
なんて、最中は考えられない。吸いついてくる中の感触と、あの人の気持ちよさそうに貪る顔でおれは破裂しそうだった。おまけに、シドが腰を動かすたび、裏筋が引っぱられて痛いような激しい快感が性器に走る。
シドは逞しい体を反らして腰を振り、「エド、エドっ」と鳴いてくれる。
「エド、エド、く、エドっ」
低い声で喘ぎながらおれのペニスを咥えこみ、ぎゅうっと締める。もみくちゃにして、激しく吸いつく。あったかい。
ついにおれは弾けた。ゴムの中で吐き出すと頭がくらくらした。目をぎゅっとつむる。急速に冷静になった。同時に、得体の知れない罪悪感。シド、ごめんなさい。なんだか彼に悪いことをした気がして、目を開けて謝ろうとした。そのとき、おれは真っ青な顔で口を覆っているあの人に気がついた。
「シ、シド?」
おそるおそる尋ねると、あの人は青い顔でおれを見下ろして、言った。
「うえ……きもちわるい……」
おれも血の気が引いた。シドは腰を上げてずるりとおれのものを解放すると、よたよたとベッドから降りて、トイレに消えた。
○
「あー……二日酔いだ……」
翌朝。ベッドの中で、両手で顔を覆ってうめく夫の頭を、おれはよしよしと撫でる。
「……きのうのこと、覚えてます?」
おそるおそる尋ねたら、シドは両手を下ろし、ややどんよりした目でおれを見た。それでも微笑んだ。
「うん。初めての経験だけど、興味深かった」
気持ちよかった、ではなく興味深かった、と言うところにこの人の性格というか、なんというかを感じる。
「それはなによりです」
おれがそう言うと、あの人はにこっと笑った。
「抱かれるほどにきみを抱きたくなるのは、なんでなんだろうね」
「……それはおれのちんこが物足りないってことじゃないですか?」
しょんぼりしてそう言ったら、シドはおれの頭を撫でて、耳元で低い声でささやいた。
「一生懸命なきみが可愛いってことだよ」
そんなこと言われたら、おれまた頑張っちゃいますよ。眉を吊り上げてそう言ったら、あの人は柔らかく笑って一言。
「うん。待ってる」
この人はおれを狂わせる。
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