24 / 49

探偵と刑事と愛の饗宴・二△

②車  別荘にバカンスに来ないか。パクストン伯爵にそう誘われたハイドとウィルクスは、午後の七時過ぎから高速道路を走っていた。  伯爵は私立探偵をしているハイドの元依頼人で同性愛者、ブロンドの口髭と洗練された甘いマスクの紳士だった。ハイドのことを「変わった男だ」と気に入っていて、誕生日のパーティに毎年招待している。そして今年は、「別荘で仲間内だけのささやかなパーティーをするから、おいで」という招待だった。伯爵は招待状に一筆書き添えた。 「きみが結婚したことは知ってるぞ、ハイド君。相当の美男だそうだな。いっしょに来たまえ」  そこで二人はハイドの運転する車に乗り、賑やかなバカンスに向かった。  なのに、おれの夫はなにを考えているんだ。ウィルクスはそう思った。  車の中をかすかに流れるモーター音。運転席と後部座席で他愛ない話をしていても、その音は消えない。  一休みにと寄ったパーキングエリアで、ハイドは車を停めるとさっさと運転席から出て、後部座席のドアを開けた。ウィルクスはシートに固まったままだ。目は虚ろに前を向いている。 「どうだ?」  ハイドはそう尋ねて、中に押し入ってきた。ドアを閉め、ウィルクスが着ている白いTシャツの上から、胸の不自然な膨らみを指でつついた。 「んっ……」  思わず声が出て、ウィルクスは耳まで赤くなる。動悸が激しくなり、吐く息が熱くなる。ハイドはさらに、両胸の膨らみを強く指で押さえた。 「んんっ」  ブブッと音がしてウィルクスの背中が反る。車内の明かりを消した薄暗い中で、広い駐車場もまた暗い。遠くに売店やガソリンスタンドの明かりが漂ってきていた。彼はそちらには目を伏せて、両脚をもぞもぞ動かす。  ハイドはTシャツを持ち上げて、両方の乳首にテープでとめられたピンクのローターをじっと見つめた。電源を切り、ぺりぺりとテープを剥がす。その下から現れた乳首を、ハイドは感心したように見つめた。手を伸ばして車内灯をつける。  慌てて手を伸ばし、ウィルクスは灯りを消そうとしたが、ハイドに手首をつかんで止められた。明るい中、彼はまじまじとパートナーの胸の突起を見ている。 「赤くなってる。それに、膨らんだな」  ハイドの言葉に、ウィルクスは恥ずかしさのあまりぷるりと震えた。耳がじんじんしてくる。ハイドは獲物を見つけた狼のように尻尾を振って、かすかに笑った。 「可愛い」  そう言って乳首を指先で弾く。ウィルクスはさらに、仔犬のようにぷるぷる震えた。乳首に快感の電流が走って、それが下腹部にまで届く。でかくなっちゃいます、と泣きそうになりながら思った。  ハイドは両手で両方の乳首をつまみ、くにくに捏ねまわしたり引っぱったり、舐めたり吸ったり。おもちゃにされてる、とウィルクスは思った。ハイドの耳を引っぱってやめさせようとするが、さらに助長させるだけだった。  このころにはすでに、ハイドの薄青い目は欲情で据わっていた。彼は欲情がキャパシティーを超えると狼のように目が据わる癖がある。舌先で硬く勃起した乳首を潰すように舐めると、ウィルクスはびくびく跳ねた。  こんなことになったのは、ささやかな夫婦げんか(もとい、ウィルクスの反抗)からだった。 「きみは堪え性がないね」とベッドの最中、ハイドに言葉で責められて、思わず「違います!」と言っていた。 「堪え性がないんじゃありません。ただ、あ、あなたがいろいろと……し、してくるから!」 「ぼくが悪いのか?」 「そ、そうです。おれだって自然にそんなふうにはなりません」  ハイドは口角を上げ、据わった目で言った。 「じゃあ、賭けをしようか」  ずるい、とウィルクスは思う。たしかにあなたはなにもしていないけど、機械の力を借りてるじゃないですか。  しかし、ウィルクスは両方の乳首にローターを固定されて、「触っちゃだめだよ」とハイドに命令されてもなお、自分はこの賭けに勝てると思っていた。それがまったく根拠のない自信だったことはすぐにわかった。  乳首で感じる。さらに、ローターによる入念な前戯のせいで、乳首はぷっくり腫れて頭が種のように飛び出している。なんかでかくなってる、とウィルクスが不安に思い、恥ずかしくなるほど、乳首と乳輪は充血して肥大していた。  そこをハイドの舌が執拗に舐める。もう片方はつままれ、頭を指で挟んで捏ねまわされた。 「う、うう、コリコリしないで……!」  必死に訴えても聞いていないうえ、駐車場の隣のスペースに車が停まった。ウィルクスはびくっとするが、ハイドはかまわず貪りついている。ウィルクスは背中を窓ガラスに向けて、なんとか危機を回避しようとする。  それなのに、ハイドの手が力強く股間に触れて、「ああ……」ととろけた声が出た。 「ほら、やっぱり堪え性がない。淫乱でド助平だな、エドは」  ハイドはにこっと笑って舌なめずりする。ウィルクスは魅入られて動けない。  ぱんぱんに張りつめたデニムの股間が狼の言葉を証明していた。 「……ってこともきのうあったし! 結局、車でしたじゃなひですか。ほうらふでふ」  必死で食い下がるウィルクスに、ハイドはほのぼのした表情になる。「あー」と言って、「そんなこともあったね」とうなずいた。  ウィルクスはベッドに座ったまま、寝そべるハイドの肩をがくがく揺さぶった。 「それに、きょふの昼も……!」

ともだちにシェアしよう!