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第3話 これは何?

 放課後美智也が迎えに来た。 「こう~帰るよ~」 俺たちはダラダラ歩きながら下駄箱に向かっていた。 「こうは陸上?」 上級生がジャージーで走っていくのをボンヤリ見送りながら美智が聞いてきた。 「う~ん多分ね」 「美智は?」 唸るってもしかして~迷ってる? 「お前悩んでる? そんな頭ないんだから時間が勿体ないわ」 「じゃぁどうすればいい?」 「ばかか? バドミントンにしろよ。 小学生の時やってて、結構上手いんだから」 また唸ってるよ、何悩む事があるんだ。 「実はさバスケ部に格好いい先輩がいてね。だから入ろうか悩んでいる」 「格好いいって……男子? いつの間に!」 「俺の情報網舐めるなよ~ったく。それにそんなに驚くこと? 俺が男子好きなの知ってるだろ」 そうでした! 知ってました。  彼は男子が恋愛?対象なんだ。女子には全く興味ない。小学生の時からはっきり意思表示していた。だから同級生はみんな知ってた。 カミングアウトって小学生でする奴いるのかな。でも嫌がらせなんかは無かったな。それは美智也がいつも率先して、色々仕事引き受けていたからかも知れないけど。こいつ為りに頑張っているんだ。そんなだからみんなに好かれる。 スポーツ万能だし……。  あれ? なんか空気が変わった…… 前から来るのは誰? 上級生なのはわかるけど……ふわって優しい風が吹いたような。足が止まって動けない。 「なつきは明日の部活紹介やるの?」 「ああ~明日部長の勝也さん来られないから。副部長の俺がやるさ。お前もそうだろう?」  「うん……面倒くさ~勝也さんと、うちの慎二さんって従兄弟だろう。だからおんなじ用事なんだってさ」 「ふーん。まあ仕方ないよ。家庭の用事なんだからさ。それに俺たちも仕事だし」 「真面目かよ!」 「真面目だよ!アハハ」 すれ違ったとき目があった気がした。 息ができない……なんて綺麗な人なんだ。透き通るような白い肌に切れ長の瞳。二年生なのは話の内容で判った。 明日の部活紹介に、なつきさんだな。 記憶のど真ん中に置いておくぞ。 耳元が煩い! 美智~。 「ねぇねぇ 今の見た? こう!」 「えっ! だっ、誰を?」 「今すれ違ったふたりのさ、日焼けしていた方が俺の言ってたバスケ部の先輩!」 ああ~良かった~なつきさんじゃないんだ。おい? 何が良いんだ?  おかしいだろう? 本当良かったじゃないよ。俺は今までに一度だって、男子が良いなんて思ったことないんだ。 それなのに男子が見とれるって! 拙い拙い拙い……美智じゃないんだぞ。 「俺やっぱりバスケ部にする! おい! こう! 聞いてる?」 美智が背中を叩いた。 痛ぇ! 煩い! 煩い! 「美智は煩い! 黙れ! 俺は帰る!」 美智也はキョトンとしているが、そんなこと知るか! ぷんぷん。 俺がこうなると、触れてはだめなパターンだって知っている美智也は、黙って子犬のように後から付いて来る。 本当良い奴だなよなぁ。 然し……打ち出した鼓動が収まらないんだ。

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