3 / 33
第3話 これは何?
放課後美智也が迎えに来た。
「こう~帰るよ~」
俺たちはダラダラ歩きながら下駄箱に向かっていた。
「こうは陸上?」
上級生がジャージーで走っていくのをボンヤリ見送りながら美智が聞いてきた。
「う~ん多分ね」
「美智は?」
唸るってもしかして~迷ってる?
「お前悩んでる? そんな頭ないんだから時間が勿体ないわ」
「じゃぁどうすればいい?」
「ばかか? バドミントンにしろよ。
小学生の時やってて、結構上手いんだから」
また唸ってるよ、何悩む事があるんだ。
「実はさバスケ部に格好いい先輩がいてね。だから入ろうか悩んでいる」
「格好いいって……男子? いつの間に!」
「俺の情報網舐めるなよ~ったく。それにそんなに驚くこと? 俺が男子好きなの知ってるだろ」
そうでした! 知ってました。
彼は男子が恋愛?対象なんだ。女子には全く興味ない。小学生の時からはっきり意思表示していた。だから同級生はみんな知ってた。
カミングアウトって小学生でする奴いるのかな。でも嫌がらせなんかは無かったな。それは美智也がいつも率先して、色々仕事引き受けていたからかも知れないけど。こいつ為りに頑張っているんだ。そんなだからみんなに好かれる。
スポーツ万能だし……。
あれ? なんか空気が変わった……
前から来るのは誰? 上級生なのはわかるけど……ふわって優しい風が吹いたような。足が止まって動けない。
「なつきは明日の部活紹介やるの?」
「ああ~明日部長の勝也さん来られないから。副部長の俺がやるさ。お前もそうだろう?」
「うん……面倒くさ~勝也さんと、うちの慎二さんって従兄弟だろう。だからおんなじ用事なんだってさ」
「ふーん。まあ仕方ないよ。家庭の用事なんだからさ。それに俺たちも仕事だし」
「真面目かよ!」
「真面目だよ!アハハ」
すれ違ったとき目があった気がした。
息ができない……なんて綺麗な人なんだ。透き通るような白い肌に切れ長の瞳。二年生なのは話の内容で判った。
明日の部活紹介に、なつきさんだな。
記憶のど真ん中に置いておくぞ。
耳元が煩い! 美智~。
「ねぇねぇ 今の見た? こう!」
「えっ! だっ、誰を?」
「今すれ違ったふたりのさ、日焼けしていた方が俺の言ってたバスケ部の先輩!」
ああ~良かった~なつきさんじゃないんだ。おい? 何が良いんだ?
おかしいだろう? 本当良かったじゃないよ。俺は今までに一度だって、男子が良いなんて思ったことないんだ。
それなのに男子が見とれるって!
拙い拙い拙い……美智じゃないんだぞ。
「俺やっぱりバスケ部にする! おい! こう! 聞いてる?」
美智が背中を叩いた。
痛ぇ! 煩い! 煩い!
「美智は煩い! 黙れ! 俺は帰る!」
美智也はキョトンとしているが、そんなこと知るか! ぷんぷん。
俺がこうなると、触れてはだめなパターンだって知っている美智也は、黙って子犬のように後から付いて来る。
本当良い奴だなよなぁ。
然し……打ち出した鼓動が収まらないんだ。
ともだちにシェアしよう!