9 / 33

第9話 初恋って良いじゃん

 朝だ。うん? 何も変わらない。 寝る前あんなに興奮していたから、なんか変化はあるのかなって思っていたけどなんも変わらんぞ。夢見心地って訳でもなく、聞こえてくるのは、あのおなじみの雄叫び。 「早く起きて! 毎日同じ事いわれて!」 ほらかーさんが怒鳴ってる! はいはい~。さていつも通りの一日が始まる。  鏡に写る自分の顔変化なし。 ふと唇に触れてみた。わぉ~ありありと浮かぶ夏の顔と柔らかな感触。 もっともっとって……あぁ気持ち良かったな……。待てよ? ヤバイ! 俺臭くなかったか? だって一昨日の夕飯餃子食べてた!えぇ~どうしよう……。  それと、良く好きな人の匂いは、いい匂いって言っているの聞くけど、俺は良く判らなかった。夏の匂い如何だった? それとねもう一つ心配なこと思い出した。最近、かーさんが俺のこと男臭くなったて、とーさんに言ってたから。 「幸!なにやってるの!ご飯食べなさい! じゃぁ行くね。ちゃんと鍵占めてよ。あっ! お弁当下駄箱の上! ふう~幸も気をつけねて」 かーさんが慌ただしいく出かけていった。とーさんはまだいる。 俺はコーンフレークを食べながら あの事を聞いてみた。 「ねぇ、とーさん男臭くなるってどんな匂い?」 新聞からひょい顔を出すと、 「そうだな 大人に近づきましたね臭。 精通……したか? 為たのか……おお~めでたいじゃないか。いつ? ませてるな……アハハとーさんなんか……おっと出る時間だ! 今度しっかり話してやるからなら。ほうか~赤飯だな。んじゃ行ってきます! 忘れ物するな。戸締まりよろしく!」 機関銃のように喋ってとーさんは行ってしまった。よくわかんね。 美智也! そうか美智也だ、あれに聞こう。 食べた食器を洗い、戸締まり確認、 弁当、すべオケ~。 「行ってきます~」 鍵を閉めて家を出た瞬間、この気持ちが満ちてきて体が弾んだ。 夏に逢える!逢える!ヤッホーー! 携帯がなる。夏だ! 「おはよう! 夏! 如何したの?」 「おはよう!幸! 声を聞きたくて電話しちゃった! 今だと家出たくらい?」 「まさにその通り! 凄いね夏! 俺もさっきから声を聞きたくて~」 「ほんと? 嬉しいなぁ。そうだ! 放課後図書室においでよ。そしたら一緒に帰れるから」 「判った行く! 楽しみ~」 「それとね……やっぱり恋人……だよ。 それと、あ あっの 幸大好きだから」 プツ切れた~ナンダよ言えなかったぞ 俺も大好きって。  初恋はなんか凄いよ。  気持ちがフワフワする。 触れたい! 疼く! 俺は猛烈ダッシュした。 もしかしたら校門あたりで逢えるかも。 こんなささやかな期待でも、胸は高鳴るんだ。

ともだちにシェアしよう!