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第9話 初恋って良いじゃん
朝だ。うん? 何も変わらない。
寝る前あんなに興奮していたから、なんか変化はあるのかなって思っていたけどなんも変わらんぞ。夢見心地って訳でもなく、聞こえてくるのは、あのおなじみの雄叫び。
「早く起きて! 毎日同じ事いわれて!」
ほらかーさんが怒鳴ってる! はいはい~。さていつも通りの一日が始まる。
鏡に写る自分の顔変化なし。
ふと唇に触れてみた。わぉ~ありありと浮かぶ夏の顔と柔らかな感触。
もっともっとって……あぁ気持ち良かったな……。待てよ? ヤバイ! 俺臭くなかったか? だって一昨日の夕飯餃子食べてた!えぇ~どうしよう……。
それと、良く好きな人の匂いは、いい匂いって言っているの聞くけど、俺は良く判らなかった。夏の匂い如何だった?
それとねもう一つ心配なこと思い出した。最近、かーさんが俺のこと男臭くなったて、とーさんに言ってたから。
「幸!なにやってるの!ご飯食べなさい! じゃぁ行くね。ちゃんと鍵占めてよ。あっ! お弁当下駄箱の上! ふう~幸も気をつけねて」
かーさんが慌ただしいく出かけていった。とーさんはまだいる。
俺はコーンフレークを食べながら
あの事を聞いてみた。
「ねぇ、とーさん男臭くなるってどんな匂い?」
新聞からひょい顔を出すと、
「そうだな 大人に近づきましたね臭。
精通……したか? 為たのか……おお~めでたいじゃないか。いつ? ませてるな……アハハとーさんなんか……おっと出る時間だ! 今度しっかり話してやるからなら。ほうか~赤飯だな。んじゃ行ってきます! 忘れ物するな。戸締まりよろしく!」
機関銃のように喋ってとーさんは行ってしまった。よくわかんね。
美智也! そうか美智也だ、あれに聞こう。
食べた食器を洗い、戸締まり確認、
弁当、すべオケ~。
「行ってきます~」
鍵を閉めて家を出た瞬間、この気持ちが満ちてきて体が弾んだ。
夏に逢える!逢える!ヤッホーー!
携帯がなる。夏だ!
「おはよう! 夏! 如何したの?」
「おはよう!幸! 声を聞きたくて電話しちゃった! 今だと家出たくらい?」
「まさにその通り! 凄いね夏! 俺もさっきから声を聞きたくて~」
「ほんと? 嬉しいなぁ。そうだ! 放課後図書室においでよ。そしたら一緒に帰れるから」
「判った行く! 楽しみ~」
「それとね……やっぱり恋人……だよ。 それと、あ あっの 幸大好きだから」
プツ切れた~ナンダよ言えなかったぞ 俺も大好きって。
初恋はなんか凄いよ。
気持ちがフワフワする。
触れたい! 疼く! 俺は猛烈ダッシュした。
もしかしたら校門あたりで逢えるかも。
こんなささやかな期待でも、胸は高鳴るんだ。
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