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第20話 ふたり
図書室の扉をそ~っと開けると、
なんと素早い! 夏がこちらを嬉しそうに見ている。
俺は思わず手を振りそうになってしまった。だって可愛いんだもん……夏!
「あれ? 加藤先生のお手伝いもう済んだの?」
部長の橘勝也先輩が声をかけてきた?
「はい! 早く終わったので加藤先生が部活に行くようにと仰られましてですね」
部長と夏が吹き出している。
「笹山? 君だっけ。とても丁寧だね
舌噛むか心配したよ」
部員のみんなにも笑われてしまった。
俺だって敬語ぐらい知ってるっうの~。
部長が少し声を張り、
「じゃぁ本借りる人、返す人以外はお疲れさまでした! さようなら! 気を付けて帰ったくださいね。あっ! 来週は読後感だからよろしくお願いします」
「はーい! お疲れさまでした。さようなら」
夏が心配そうに寄って来た。
「本読んでる? チャンと借りて行きなよ。もし大変だったら読後感一緒に書こうか?」
「はい! お願い致します! 今から選びます!」
夏は頷きながら部長の傍に行き、貸し出しと返却作業を始めた。
俺は……何借りるか悩んでいた。
簡単な物語はどれかなぁ……
ラインが来た……夏からだ!
「悩んでるなら コナンドイルが良いよ。シャーロック・ホームズシリーズにしたら? 面白いよ!」
「ありがとう! そうする!」
俺はさんざん悩んで赤毛連盟にした。
「笹山君はコナンドイルが好きなの?」
部長は貸し出しカードにハンコを押して
「僕も好きだよ! 今度感想聞かせてね」
「はい!了解イタチました。」
夏と部長は大笑いしている。
「はい! 此どうぞ。じゃぁねさようなら」
夏はしれっと作業に戻った。
俺は教室に戻り帰り支度を済ませると、
校門に向かった。
ラインは夏からだ。
「今から向かうね💓」
「待ってる💓」
今借りてきた本を出して読み始めた。
コナンって言うから……江戸川コナンに関係してるのかと思ったけど……此は~読み終える自信ない俺!
「お待たせ! 今から読んでるの?
偉い!」
夏は俺の学生服の裾を摑み歩き出した。
俺は夏の横顔をそっと見る。
綺麗だ……なんて綺麗なんだ。
「夏」
小さな声で呼んでみる。
夏は俺の顔を覗き込み、にっこり笑いながら、
「うん? どうしたのこう……」
「何でも無い! 呼んでみたかっただけ」
夏は何も言わず俺の手を握り、自分のポケットにねじ込んだ。
俺はギュッとその手を握りしめる。
そして笑いあった。
静かな時間を感じた。ふたりだけの時に思えた。
何も言わなくても判る……大好きなんだ……大好きなんだ! 泣きたくなるほどに。
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