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第13話 尋問
一瞬、殴られるのかと身構えた。しかしヴィクトルは手を出さない。にこやかな顔で蛇口を捻り水圧を調整すると、入念に譲の下半身を流し始めた。
譲は言葉を失った。と同時に、肌に触れられて身をよじった。湯をかけられ肌を撫でられる。下半身をまさぐるような動きだ。悍ましさに支配される。
(でもこれは洗い流しているだけで、教授にされた時のように、陵辱目的で触られているんじゃない)
譲はぎゅっと目を閉じて耐える。
必要な触れ合いだ。温かい部屋と食べ物、そして風呂を用意され、譲は決して悪辣な環境に置かれていない。むしろ贅沢を与えられている。
痛めつける目的で買われたのではないと信用できる。
大切に扱われているうちは、多少触られるくらい我慢をしなければいけない。
「ぅ・・・!」
「ごめんね痛かった?」
「ぃや、ひっ!」
ヴィクトルの指がペニスの先っぽを摘んでいる。
皮を引っ張って亀頭を露出させられ、たまらず悲鳴を上げてしまった。
現時点では、くたっとした己れのそれ。薔薇の茎を突き刺された姿形が重なり、身体が震えてしまう。
「やめてくれ、痛い・・・痛い」
「ああ、可哀想に。余程痛かったんだろうね。大丈夫だよ。汚れを洗い流して傷を見るだけだ」
「ウッ、うう」
剥き出しの亀頭にシャワーが掛かった。水圧は弱められているが、刺激に歯を食いしばる。ヴィクトルは鈴口を指で押したり広げたりして、覗き込みながら入念にシャワーを掛ける。
「く、う・・・ぅあ」
譲は限界になり嫌々と首を振った。
自分で洗えるなら加減も出来るが、他人の手に急所を委ねなければいけないのは怖い。
ヴィクトルは容赦なくシャワーヘッドをペニスに当てる。最後に股間全体に湯を掛けて、一度シャワーを壁に戻した。やっと終わったかと息をついたのも束の間、彼は石鹸を手にした。
「肌に優しい薬用の石鹸だよ。傷には沁みるかもしれないけど、清潔にしておきなさいと医師から言われている」
石鹸は薬用成分のために、独特な香りがする。ヴィクトルの手のひらで泡立てられ、譲の肌に乗せられる。首、肩、背中、上から順番に柔らかい泡に包まれて行くが、心持ちは穏やかになれなかった。
ヴィクトルの手がついに胸に行きつき、胸筋の厚みを確かめるように手のひらで覆われると、すぅと背筋に憎悪が走った。
(こいつ・・・いつか殺してやる・・・・・・っ)
譲は屈辱感に苛まれて、内心で毒づいた。
けれども、ヴィクトルは肌に泡を乗せて優しく擦り、大して時間をかけずに下腹に降った。胸など気に留めていないように、乳頭を通過したのだ。
「えっ」
「ん? 痒いところがあったかい?」
「違うっ!」
咄嗟に叫び、顔を真っ赤にして俯いた。
下半身にしても同じだった。ヴィクトルは正しいやり方で、ただ丁寧に肌を洗った。
恥ずかしい。まるで自分だけが意識しているみたいだったからである。
「これでお終いだ」
「・・・・・・っ」
全身の泡をシャワーで流されて、譲は抱き起こされる。
すごく疲れていた。早く温まりたい。湯に浸かるのは随分と久しぶりなので、わずかながら救われる。
ふっと気を抜いた時、後ろから譲を抱き抱えていたヴィクトルが下っ腹を手で押した。
「っ、う、何だ」
「おしっこはもう残ってないかい?」
ヴィクトルは悪びれもせず聞きたくない言葉を口にする。だが譲は気づき始めていた。この男に譲を揶揄おうと思う底意地の悪さなどないのだと。
とはいえ、見過ごせないふるまいだった。
「もう出ないと思う」
「本当に? 出し切ってしまった方がいい。私の前でするのが恥ずかしいから嘘をついているじゃないのかい?」
譲は黙った。
部屋で粗相をしてしまった際にあらかた排出したので、今は切迫した尿意を感じていない。
しかし腹を押されるなら話は別だ。
「恥ずかしいんだろう。当然だ。わかるよ。だから君のプライドを払拭させてあげようと言っている。何度か出してしまえば、羞恥心だって振り切れるんじゃないかな」
本気で言っているからタチが悪い。
ぐうっと下腹部を揉み込まれ、譲は声を押し殺して耐える。
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