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第2話 R18
「お部屋、こちらになります」
「ありがとうございます」
仲居さんに案内された部屋に着くと、荷物を畳に置いてユウが部屋を見渡す。
「めちゃめちゃ良い部屋だな」
「そうだな」
俺も荷物を置いて、テーブルの近くに座ると、すかさずお茶が出てくる。
「お夕飯は何時になさいますか?」
「オイ、夕飯十九時で良いか?」
テーブルから右奥にはベッドが二つあり、ユウは自分が寝ようと思っている方に座ると
「ン、良いよ」
「では、十九時にご用意させて頂きますね。良かったら当館自慢の温泉へどうぞ色々と回ってみて下さい」
「何種類かのお風呂があるやつですよね?」
ベッドの方からユウが少し興奮したように仲居さんへ声をかけると
「そうです。大浴場や露天風呂、その他にも貸し切りで四種類ほど温泉が楽しめますし、眺めも良いので是非。貸し切り風呂は内線でご予約出来ますので、お知らせ下さいませ」
「ありがとうございます」
会釈をして立ち上がった仲居さんに、俺も会釈しながらそう呟くと、ニコリと笑顔で返されて仲居さんは部屋を出ていく。
あれから二人お互いに仕事の調整をして、何だかんだと割とトントン拍子に休みをもぎ取り車で移動出来る範囲ながら旅行に来ている。
俺はテーブルに置かれたお茶を飲みながら、側に置いてあるお茶請けに手を伸ばそうとして
「なぁ、ここ高かったんじゃ無いのか?」
ベッドから腰を上げて、俺の側にくるとユウはそう尋ねながら腰を下ろし、俺同様にテーブルに置かれたお茶を一口飲む。
「まぁ、そうだな」
行楽シーズンを外しているといっても、内風呂付きの離れの部屋は、まぁまぁな良い値段だ。それを隠してもしょうが無いので素直に答えた俺に対して
「え?……じゃぁやっぱり俺も半分払うケド?」
と、ユウが首を少し傾げて言ってくるので
「イヤ、それだと意味無いだろ?今回は俺から誘ってるし」
お茶請けの饅頭を口に放り込みながら答えた俺に、少し苦笑いの表情を向けるユウは
「そうだけどさ……」
「気にすんなって。で、風呂入りに行くんだろ?」
そう言って強引に話を終わらせ、楽しみの一つでもある温泉の提案をすると、ユウは微かに微笑んで
「じゃぁ、予約しなくていいやつ入りに行こうぜ?」
言い終わるとお茶請けの饅頭を食べながら、傍らに置いてある荷物の中をゴソゴソし始める。
テーブルの上に置かれた旅館のパンフレットを手に、離れの部屋から本館へと移動して、先ずは大浴場の方へと向かってみる。
シーズンオフのため人もまばらで、ゆっくり温泉に浸かれそうだなと歩いていると
「なぁ、なんで今回は旅行に行こうと思ったんだ?」
隣で歩いているユウが、俺の方には向かずに尋ねるので
「あ?まぁ節目だから……、良いかと思ってって言ったよな?」
「聞いたけど……、ずっとこういうの拒否ってたからさ……」
……………。そうだ。今まで俺はユウと旅行に行った事は一度も無かった。
基本的にインドアな俺は、仕事と家の往復が通常で、ユウとどこかに行くってなっても飯を食いに行くか、デートでも映画を見に行くかってところで……。そんな俺にいつもユウはブツブツと文句を言っていた。
大学の卒業旅行でさえ、俺はユウと旅行に行っていない。
ユウの方は結構アクティブで、友達と旅行に頻繁に行っていたし、遊園地とかのテーマパーク系も友達や友達カップルに混じって行ってくると度々聞いた事がある。
最初の方は俺にお土産とかも買ってきてくれてたけど、俺がそういうの食べないって解るといつの間にか買わなくなったっけ?
「お、ここだな」
ユウの質問にうまく答える事が出来ない俺は、遠目にある大浴場の看板の文字に反応すると
「まぁ、癒やされようぜ?」
ポンとユウの肩を叩いて、スタスタと歩き出す。
後ろから小さい溜め息が聞こえたが、俺は聞こえない振りをした。
大浴場の脱衣所には人影は無く、サッサと服を脱いでタオルだけ掴むと、引き戸になっている木の扉を開けて中へと入る。
「ラッキー、貸し切りじゃん」
先ずはシャワーで全身を洗って、濡れたタオルを絞ると、湯船の縁にタオルを置いて温泉へと入る。
「ッ……、おぁ~~~……ッ」
湯船に浸かって声を出すと、体を洗い終わって入ろうとしているユウが
「おっさんかよ」
と、笑いながら脚を湯船へと入れていて……、久し振りに見る恋人の裸に、俺は一瞬目を奪われるが、フイと逸らすと
「イヤ……、おっさんだろ?」
ニヤニヤと笑いながら俺の隣に腰を落ち着けたユウも
「ッ、あ゛~~~……」
と、気持ち良さそうな声をあげるので、俺はブハッと吹き出して
「イヤ、お前も言ってんじゃん」
笑いながら突っ込む俺に
「イヤ、これは言っちゃうなッ」
と、二人顔を突き合わせて笑い合う。
「はぁ~、マジで気持ち良いな」
「そうだな」
二人並んで、ゆったりと温泉に浸かっていれば、他愛もない会話が弾む。
もう一つの露天風呂へも行こうと思っているユウは、こっちで長居するつもりも無く
「そろそろ露天風呂の方も行ってみるか?」
と、誘ってくるので
「……、そうだな」
少しのぼせそうな体を俺は起して、俺達は大浴場を後にする。
露天風呂の方も仲居さんが言っていたように、眺めが凄く良かった。
目の前が海なのでは?と思うような湖で、景色の良さにテンションが二人とも上がってしまいそれこそ長風呂してしまったくらいだ。俺は何度か足だけ湯船に浸かって、上半身は風呂から出て木の縁に座っていたが、ユウは結構長風呂も平気みたいで、部屋に帰る頃には指先がシワシワになっていておかしかった。
風呂から出て部屋でゴロゴロしていたら、夕飯が到着。
普段とは違う豪華な料理に酒で、二人とも気分が上がって普段の仕事の愚痴や共通の友達の話で盛り上がって、もう一度酒が抜けた頃に今度は部屋の内風呂に入って明日はその辺を散策しようとベッドに入った。
今日一日、俺はここまで車を運転して来たし、風呂に入るのも結構体力を使う。
ベッドに入ると、直ぐに心地良い疲労感とベッドの肌触りやスプリングのクッションにウトウトしていると、ギシリッとベッドが軋んで沈む。
「……ン……?」
沈んだ方に顔を向けて、薄っすらと目を開けると、ユウが俺を覗き込む感じで見ていて
「どうした……?」
少し掠れた声で俺が呟くと
「………ッ、しないのか?」
戸惑い気味にユウが呟き、俺は目を見開く。
……………、こうやってユウから誘われるのは、いつ振りだろうか?
だけど俺は布団の中にある手をギュッと握って、ヘラッと笑うと
「明日、早いだろ?それに……、色々見て周るじゃん……」
明日の事を考えて……と、出来るだけ遠回しに断わると、ユウは一瞬グッと口元を引き結んで布団の中に手を伸ばしてくる。
「チョッ、オイッ……」
「勃ってる……」
「ッ……」
パンツの上からユウの指が確かめるように俺のモノをスリッと撫でて呟くから、俺は一瞬息を飲み込んでどう言おうかと考えていると、ユウの指は明確な意思を持って俺のモノをギュッと握ると、上下に指を動かし始める。
「オイ………ッ、待てって」
握った拳を緩めて、ユウの手首を掴んで止めると
「……ッ、何で?」
「だから、明日……」
「そうじゃ無くて……ッ」
最後までは言葉に出来ない感じでユウが口を閉じる。たが、目は俺を見ていて……。その表情に俺に何が言いたいのか解る。
その表情に俺も一度唇に力を入れ、掴んでいるユウの手首をグイッと更に自分の方に引き寄せ、バランスを崩したユウが俺に覆い被さるような形で倒れてくるようにしてから、一度ユウを抱き締めると反対にクルリと態勢を返して、俺が上へと覆い被さる。
「しても良いのか?」
上からユウを見詰めて言った俺に、少し眉間に皺を寄せながら
「俺から仕掛けたのに、それを聞くのか?」
と返され、俺はユウの唇を奪う。
「ンゥ……ッ」
本当はいつだって、ユウを抱きたいと思っている。
ゆるく合わさった歯列を自分の舌で押し開いて、口腔内へと舌を押し込み上顎の波打っている皮膚を舌先で愛撫すれば、無意識に回されたユウの腕が俺の首にかかると力が入った。
久し振りのユウの体温を近くに感じて、俺は興奮してしまう。
お互いに社会人になって仕事が忙しかった事もあるが、大学を卒業してから挿入込みのセックスの回数は劇的に減った。
興奮しながらユウが着ている寝間着を下から巻くし上げるように手を滑らすと
「ふ、ぁ……ッ、悠二……」
合わさった唇をずらし、堪らずと言った感じでユウが喘ぐ。
その声音にゾクと腰に重い感覚が広がり、俺は脇腹から伸ばした手を健気に立ち上がっている乳首へと移動させ人差し指の腹でスリと撫でる。
たったそれだけの事で、ユウは息を詰めて顔を枕の方へと押し付けるように向ける。
自分の愛撫で相手が気持ち良さそうになっているさまを見ると、もっと乱れさせたい衝動に駆られ、俺はユウの体の中心にもう片方の手を伸ばすと
「アッ……」
俺同様に勃ち上がったモノは、俺が触れるとビクンッと反応する。それと同時にユウの口から上擦った吐息が漏れ、俺はもう一度ユウの口を塞いだ。
このまま滅茶苦茶にユウを抱き潰したい。
俺はパンツの中に手を差し込み、下着の中で勃起しているモノを直接触ると、先端は既に先走りで濡れていて、それだけで脳が焼き切れそうなほど興奮してしまう。
「ンゥッ……、悠二……ッ」
口付けの合間に唇を離して、ユウが甘く俺の名前を呼ぶから、それに反応してまた深く唇を奪う。
パンツの中で扱くのも窮屈で、俺は一度ユウのモノから手を離すと、下着ごとパンツを膝あたりまでずらし、露わになったモノを再度手の中に握り込むと先端の先走りを指先で擦り付け上下に扱き始める。
「アッ……、フゥ……ッン」
よりダイレクトに気持ち良い感覚がユウを包むのか、喉を仰け反らしてギュッとシーツを掴む痴態に、俺は獰猛な感情が湧き上がると、仰け反った喉に歯をあててしまうが
「ヒ、ン……ッ、悠、二ッ……、止めッ」
そのままガブリと興奮で噛んでしまいそうな衝動を、ユウの台詞が引き戻す。
「……ッ、ゴメン……」
はぁ~……。と一つ溜め息を吐き出して、喉にキスを落とし俺は顔を下へとずらして、扱いているモノへと舌を伸ばす。
「えッ?……ッ、悠二ッ」
俺が何をするのか解ったのか、ユウは少し慌てながら上半身を起き上がらせるが、それよりも早く俺がユウのモノに舌を這わせた事で息を呑む。
視線をユウに向けると、バチリと視線が絡み途端にユウの顔が赤くなる。
「ハッ……、可愛いな、ユウ」
裏筋を舐めながら呟いた俺に
「何を……ッ」
恥ずかしさに上体を起して、俺の顔を離そうと頭に手を置いてくるユウより早く、俺は口を開けモノを口腔内へと含むと、ビクリッと頭に置かれた指先が跳ね
「ンウゥ……ッ、ア……」
と、切なそうにユウが喘ぐ。
俺は唇でユウのモノを扱きながら、膝までずり落ちているパンツと下着を更にずらし脚から落とすと、閉じて俺の体の下にある脚を上体を少し浮かせて両サイドへと開き、その中に自分の体を入れ込む。
舐めやすくなったモノに手を添えてカリ首に輪っかを作った指で扱きながら、鈴口を舌でチロチロと刺激すると、堪らないのか上半身を起き上がらせていたユウは、再びベッドへと沈んだ。
「ゆう、じ……ッ、持ち、良い……ッ」
「ん?気持ち良いか?」
伸ばした舌をしまって聞くと、もっとして欲しそうに腰が浮いてくる。
俺は少し笑い、もう一度ユウが気持ち良くなるように舌を伸ばす。
久し振りに咥えた恋人の感触を刻みつけるように、執拗に愛撫を続ける。
匂い、味、感触、俺を呼ぶ声に、俺によって乱れるユウの姿……全てを。
俺はこの旅行を最後に、ユウと別れようと決めている。それは俺の感情だけではどうしようも無い事だからだ。
多分、ユウも薄々は気付いている。
楽しく旅行はしているが、ふと俺に見せる表情や、俺に何か言いたそうにしている雰囲気に、言わないが全身でそうだろう?と訴えかけているのは解るから。俺はその度に話を逸らそうとしたり聞こえなかった振りをする。出来るだけ最後までこの時間を引き延ばしたいから……。
恋人で居られる時間を……。
ジュブ、ジュポと音を立てながらユウのモノをフェラしていると、口の中でビクビクと痙攣し始めている。きっと絶頂が近い。
俺は空いている方の手を再びユウの乳首へ伸ばすと、立ち上がっている果実を抓み引っ張る。
「ヒゥッ……、悠、二ッ……もぅ……ッ」
浮いた腰が上下に揺れているユウに興奮して、俺も自分の下着の中で先走りが射精のように溢れ気持ちが悪い。
乳首を愛撫していた手を堪らずに自分のモノへと伸ばすと、パンツと下着をずらし勃ち上がったをキツく握りユウのをしゃぶりながら扱く。
ユウの内壁を反芻し、扱く手に圧を加えながら上下に動かすと直ぐに達してしまいそうになる。
「アッ、アァ……、ゆう……もぅッ、も……ッ」
ビクビクとユウの内腿が痙攣している。俺は亀頭をツルリと唇で覆うと、ジュウゥッと舌を絡ませて吸う。
「ンアッ……、出るッ……イ……ッ!」
一度ビクリッと腰を跳ねさせ、次いでビクビクと震えながら何度かに分けて俺の口の中でユウが達する。
口の中に広がった青臭い液体を嚥下しながら、俺もまた自分の手の中に射精してしまった。
チュルリと尿道にある精液も吸い取るようにしユックリと口からモノを離すと、直ぐにユウから離れて、テーブルの上にあるティッシュを取りに行く。
「悠二……?」
俺の後ろからユウが声をかけるので、俺はティッシュを何枚か取って自分の手を拭いながら後ろを振り返る。
するとユウは戸惑い気味に
「……ッ、最後まで……しないのか?」
呟いたユウに俺は苦笑いしながら
「だから……、明日早いだろ……?」
拭ったティッシュをテーブルに放り投げて、俺はベッドの上で固まっているユウに近付くと隣に寝転がり
「ホラ、布団かけて」
サイドに丸まっている布団を引き寄せると、ユウと自分にかけてユウを抱き締める。
「本当に、しないのか?」
眉間に皺を寄せて再度俺に確認のように呟く恋人の唇にチュッと音を立てて軽くキスをし
「もぅ寝よう。するなら明日な……」
自分の胸にユウの額を押し付けるようにして抱き締めると、俺は天井に顔を向けて目を閉じる。
しばらくするとユウは諦めたのか一つ溜め息を吐き出して、そのまま眠りにつく。
規則正しい寝息が聞こえてくると、俺は目を開きユウの方へと顔を向け、額にかかった前髪を指先で梳いて寝顔を見詰める。
この旅行が終わったら、ユウと別れようと決めた理由をふと振り返る。
高校時代はお互いに初めてできた恋人で、しかもユウはノーマルだった。人前で普通に手を繋ぐ事も、キスする事も出来ない俺を当時のユウが選んでくれた事自体俺にとっては奇跡で、できるだけ寂しい思いや嫌な気持ちにさせまいと、言える時には自分の気持ちを伝えていた。その時はそれで良かった。お互いに高校生だし、焦って直ぐに体も繋げたく無かった俺は、ままごとみたいな付き合いで十分に満足していたし、時間はこれから幾らでもあると思っていたから。
初めて体を繋げたのは大学に入って、一緒に暮らすようになってからだ。
それまではお互い実家暮らしだったし、親の目があるから抜き合いはしても、最後までする事はしなかった。同じ大学を受験して二人とも受かって、ルームシェアという名目で親を説得して暮らすようになった。
一番蜜月だった時期は、大学の時だ。
誰の目も気にせず、好きな事ができていたから。だがそれも卒業間近になって、突然二人暮しをしている部屋にユウの母親が訪ねてきて、言われた一言で終わってしまう。
『卒業後は勿論別々で暮らすわよね?』
……………。おばさんはきっと何か思うところがあったのだと思う。
その日、ユウは一限から講義で部屋に居らず、俺しか居なかった。今となってはどうしてそのタイミングで……とは思っていない。きっと解った上で俺に言いに来たんだと思っている。
ユウのところは母親と二人で、ユウは一人っ子だ。いつまで経っても彼女を作らないユウを度々心配していたのも知っているし、俺に誰か紹介できる女の子はいないかと言ってきた事もある。
それを言う時は決まってユウがいない時だった。
俺はそれをおばさんから言われてもユウに言った事は無い。
………、ユウに言えば良かったのか、今でも解らない。けど、言えば悲しむか、怒るかの想像しか出来なかったから、隠すようで申し訳無かったが言えなかった。
お互いに就職先が決まって大学卒業間近に、俺からルームシェアの解消を申し出た。
ユウは最後まで嫌がったけど、職場の場所を言い訳にしてそれぞれ一人暮らしを始めて……、それから俺がユウをあまり抱かなくなった。
俺の中でおばさんに言われた事はショックだったし、牽制されてるんだろうなって……感じたが、それ以上におばさんの気持ちも理解できる自分がいたから……。
「う……ん……」
抱き締めているユウが少し吐息を吐きながら寝返りをうつので、俺は腕を解いて楽な態勢になるようにする。
俺から背中を向けるような形で再び寝息をかき始めたユウを横目に、俺は体ごと天井を仰ぐ。
働きだして、学生の時とは違って会う時間も少なくなった。会ったらユウは俺に抱かれたがったけど、最後まで抱いて良いのか俺に迷いが生じて……、抜き合いの方が多くなった。
手放した方が、ユウの為。
その頃からその事が頭の中をグルグル、グルグル回って……。けれど、出来ずに今日まできてしまった。
俺の気持ちは、昔のままだ。出来れば別れたくない。
「……………。ケド、ユウは戻れるだろ?」
天井に向かって呟いた言葉に、俺は苦笑いを吐き出す。
働きだして何年目かに、久し振りにユウの部屋へと泊まりに行った事がある。宅飲みして、それぞれ風呂に入るってなって、ユウが先に入っている時に仕事の後輩から電話があって、少し調べ物でユウのパソコンを開いた。その時に本当に魔が差したっていうか……、検索履歴を見てしまったのだ。
そこにはまぁ……、成人男子ならではの履歴があって……。けれど、俺にとってはそれは結構な衝撃で……。
いわゆるAVっていわれる画像だったのだが、男女モノで……。その時に、ユウはまだ女で抜けるんだな。と確信した時のショックは俺にとって結構大きく……。
元々ノーマルだし、変では無い。けれど大学の時から俺に抱かれていたわけだし……。そりゃぁ、社会人になってからそういう行為自体俺がユウに遠慮して、劇的に減ったけど……、抜く時は女で抜くんだと突き付けられた現実に、俺は叩きのめされた。
それを見てからは、益々ユウとの行為は減った。かといって他の奴に目移りするわけでも無くて……。
徐々に、考えたくないけれど、これから先の事を考えるようになった。
歳を重ねる度、一緒にいれる理由が無くなっていく。俺達の周りでも早い奴はもう結婚していくし、子供が出来てくる。
それは世間一般に普通の事。俺は元々がゲイだし、家族にはカミングアウトはしていないにしろ兄弟がいる為、そこまで自分に結婚や孫の事を親から言われた事が無い。
けどユウは違う。
おばさんと二人家族で、ユウも元々ノーマル。しようと思えば結婚や子供は望めば手が届くのだ。それを俺が邪魔している。
二人の気持ちが一番だってのは理解しているが、学生の時みたいにその気持ちのままに押し通す我儘を、優しいユウが出来るのか……。
俺は目を閉じて、重い溜め息を一つ吐き出すと、考えている思考を止めた。
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