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 慣れない作業に悪戦苦闘した川島は、まるで泥棒のようにこっそりとトイレのドアを開け、ゆっくりとリビングに戻った。  本宮は川島に気づくと、いきなり川島を抱え上げ寝室まで運び、乱暴にベッドへ投げ捨てた。 「うわっ、ちょ、雑!」 「すまない。今の俺に余裕の二文字なんて皆無なんだよ」  本宮の逸る気持ちは小刻みに震える手から分かる。そのせいで川島の興奮は切なさを伴いながらぐんっと伸び上がる。  本宮は自分の着ているシャツを引きちぎるように脱ぎ捨てると、今度は川島の上着を剥ぎ取り、シャツのボタンを上から震える手で外し始めた。  三つ目ぐらいまで外すと、もどかしくなったのか、川島のシャツも結局本宮によって引きちぎられてしまう。露わになった川島の上半身を、両手で脇腹から指を滑らせ、わざと核心的な部分を避けるように指を這わせる。そうされることで、川島の意識は否が応でもそこに集中し、その部分が愛撫を求め厭らしく粟立つ。  本宮は苦しげに身を捩らす川島に「感じるか?」と楽しそうに問いながら、中指で掠めるように優しく川島の胸の突起を弾いた。川島は本宮の指先に乱れ、自分の身体がどんどん発かれてしまうのを感じる。その快感に酔いしれている自分がひどく恥ずかしいのに、川島は為す術もなく本宮に身体を預けてしまう。  自分が絶対超えられないと思っていた男を、無自覚にも翻弄し苦しめていたという優越感が、川島の興奮を更に煽る。あの時も、あの時も、本宮は自分を好きだった。そんな過去の思い出を振り返るたび、胸が締め付けられるような興奮を覚え、川島の体は、本宮の愛撫に敏感に反応する。 (どうしてこんなことになったんだろう……)  ぼんやりと虚空を見つめながら川島は考える。でも、欲情で赤く染まった頭では、所詮何も考えられない。ただ、本宮と繋がっているという満たされた心が、自分のセクシャルな気持ちを助長していることだけは分かる。それが、自分達のセックスをより特別で情熱的なものにしていることを、川島は素直に、心から幸せだと感じた。 「あ、あっ、んっ」  本宮は、川島の胸の突起に唇を這わせ舌で転がした。ねっとりとした唾液を含んだ舌で、両方のそれをわざといやらしく音を立てるように吸い上げる。 「うっ、やっ……いたっ、い」  痛いほど吸いつかれ、川島のそれは熱く敏感に尖り始める。すると、また優しく本宮の舌先で転がすように愛撫され、そのくり返しのせいで、より感度を増した川島のそれは、本宮の執拗な愛撫に隙なく反応してしまい、その快楽に思わず喘ぎ声が漏れる。 「気持ちいいか?」 「はあ、あっ……うっん、き、気持ち、いいっ」  本宮は川島の胸の突起を愛撫しながら、直球な言葉を投げつける。川島はものすごく恥ずかしいのに、本当に気持ちが良くて、素直に答えてしまう自分に心底呆れてしまう。 「良かった……」 「んんっ、はぁ……りょ、良っ」  本宮は、まるで別の生き物のようないやらしい舌を、下半身へと流れるように滑らせた。ウエスト付近に来ると、本宮は川島のベルトを器用に抜き取り、ズボンと下着を一気にずらした。そこにはまだ完全に満ちきっていない川島のペニスがあるが、本宮は、構わずそれをいきなり咥えこむ。 「な、何してんの?!」  川島は動揺を隠しきれず、上半身をがばっと跳ね起こすと、本宮は川島の様子などお構いなしに、淫猥な目つきでペニスを喉奥までしゃぶる。 「うわわ、りょ、良、お前平気なのか?」  本宮は何も答えず、ただひたすら川島に絶妙なリズムで愉悦を与える。川島は両肘を突きながらその快感に思わず仰け反り、声を出さぬよう下唇を噛みしめた。 「声出せよ。もっと」 「んっ、はあっ……あっ」  命令口調で本宮はそう言うと、一端川島のペニスから口を離し、はち切れそうなほど起立している川島のそれは、中途半端なお預けの状態に晒される。         本宮はベッド脇のサイドテーブルから何かを手に取ると、掌にぬめりのある液体を絞り出した。 「俺たちには必要不可欠だからな」  「え?」  本宮は妖しげな液体を川島の秘部とペニスに塗りつけると、徐々にそこが熱を帯びていくのが分かる。その感覚に意識を奪われていたその時、本宮はいきなり川島の秘部に指を差し入れ、中を掻き回し始めた。 「うわっ、や、やめっ」  川島は焦って腰を引いたが、力の強い本宮に引き戻され更に奥まで指を入れられてしまう。 「よく慣らさないと。俺のが入らないだろう?」  本宮はそう言うと、自分のズボンと下着を器用に脱ぎ、そこに現れた本宮のペニスに、川島は驚愕してしまう。 「む、無理……」  震える声と蒼白になった顔で本宮に訴えかけたが、本宮はそんな川島を軽くあしらった。 「大丈夫だよ。俺が必ず絶頂を味合わせてやる」 (何を根拠にその自信!)  川島はアワアワと口をぱくぱくさせると、何かの合図のように、本宮はいきなり川島に深いキスを落としながら、秘部へと挿入した指を大きくグラインドさせた。その指が、川島を乱すスイッチのような部分を掠めた時、川島はその衝撃に体をびくんと震わす。 (何だ? 今の)  確か、男でも女性と同じようなオーガズムを得られると聞いたことがある。でもまさか、目の前の肉棒で今暴かれたスイッチを確実に入れられたら、川島は一体どうなってしまうのだろうか? 「あ、ああ、ちょ、ひ、広げないで」 「広げないと無理だろう。もうちょっと我慢しろ」  気がつくと本宮の指は増えていて、ぬちょぬちょと厭らしい水音を立てながら川島の秘部を押し広げていく。 「あはぁっ、だ、だめ、そこっ」 「ここか? ああ、良かった。なあ、千秋、ここまで来て逃げないでくれよ。頼む」 「え? や、やだよ。い、入れるの? それを?」 「そうだよ。俺の思いを受け止めてくれ。千秋……愛してるっ」  本宮は川島に熱い告白をぶつけると、自分のペニスを川島の秘部に宛がい、容赦なくそれを一気に挿入した。同時に、ローションで濡れている川島のペニスを擦り上げ、そのせいで射精感が急速に高まり始める。 「ああっ、くっ、ううっ」  川島は苦しいのに気持ちがいいという味わったことのない感覚に戸惑い、男同士のセックスというディープな性の世界に淫らに堕ちてしまう。  更に、本宮がペニスを抜き差しすることによる愉悦は、川島の想像を遥かに超えるものだった。自分の理性を手放しそうになるほどの快楽がこの世に存在するなんて。その事実に川島は心底驚く。 「りょ、良……あ、あっ」  川島は本宮の腰を両手で掴みながら、貪欲に快楽を求めようと、本宮のペニスを自分の良い部分に当たるよう淫らに腰を使った。  ついに川島はおかしくなった。こんな淫乱な自分はひどく受け入れがたいのに、何故か本宮の前では、抗いたくても、甘い、蕩けるような気分を強引に引き出されてしまう。 「いいっ、良、あ、あっ、いいっ」  こんな台詞を吐くなんて自分は本当にどうかしている。川島は熱に浮かされた頭で本宮を見つめると、その欲情を滲ませた瞳に誘われるように、思わず本宮の両方の胸の突起を、掠めるように指先で愛撫した。本宮は川島の積極的な愛撫に、平気な顔をしながらも腹筋を力ませ、感じていることを示す。それが異様にエロティックで、川島は尖り出した本宮の突起を執拗に愛撫する。 「やめろ。俺はいい……集中でき、な……いっ」  眉間に皺を寄せる顔にかなりそそられる。しかし、川島は調子に乗りすぎたのか、本宮は川島の両手を素早く束ねると、頭の上で押さえつけた。 「……覚悟しろよ」 「え?」  こいつは今まで何人の男女を鳴かせてきたのだろうか? 何をしても完璧な、綻び一つない男。セックスに置いても例外がないのかと、川島は火花が散り始めた眼前で、絶望的に、本宮から与えられる悦楽に途方に暮れるしかない。  その腰使いは反則だ。狡い。本宮は本当に狡い。  小刻みに腰を揺らしながら、本宮は自分のペニスを、執拗に川島の良い部分を抉るように摩擦を与える。本宮の鍛錬されたテクニックに嫉妬心を覚えつつも、川島の体はその快楽に真っ直ぐに突き進んでしまう。 「だ、だめっ、だめっ、い、いくっ」  急速に高まる射精感に、川島は上半身を半分ほど起こし腹筋に力を入れながら、本宮の両腕を掴み必死に叫んだ。本宮はそんな川島をうっとりと見つめながら、まだ余裕のある表情で、川島をもっと高みまで追い詰めようとわざと強弱を付け、川島を焦らす。 「まだだ。お前を存分に味わうんだよ。俺は」  本宮は口角を片側につり上げ、憎らしいほど妖艶な笑顔で川島を見下ろす。そんな扇情的な本宮の表情に、川島の悦楽の波は早く頂に向かえと助長されてしまう。でも、本宮が打ち付ける腰の強弱によって、絶頂を迎えようとする波は微妙に消え失せ、川島はそれが耐えられなくて、子どもように顔を左右に振りながら、本宮に強く訴えた。 「やめ、ろっよ、ねえ、いきたいっ、良!  は、早く、いかせてっ」  川島はあまりのもどかしさに思わず涙を流し、これでもかと突き上がる切なさを表情に晒すと、それが本宮の欲情に更に火を付けたのか、本宮は苦しげに眉間に皺を刻ませた。 「くっそ、早いって」  本宮は悔しそうにそう呟くと、今度は、川島の腰が砕けてしまうほどの激しさで強くペニスを打ち付けてくる。 「はああ!」  極致な射精に声が枯れるほど叫んだ瞬間。川島の視界がぼやけた。気を失うかもしれないと危惧したのは、川島が全身で本宮の愛を受け止めた証拠なのだと、霞む頭でそう考えた……。

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