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「はぁぁ……」 (やばい、ぜんっぜんテンションがあがらない) あの日の放課後をびっくりするくらい引きずっててすごい。 今までこんなに落ち込んだことある? ってくらい心が重い。 授業とか全部上の空だなぁ…次のテスト絶対終わった…… ピロリン♪ 「んんー」 僕が「終わったかも」ってグループLINEで呟いたから、雪と…特に珊瑚からえげつなくLINEが来る。 なんて返せばいいかわからなくて既読無視してる僕も悪いんだけど…… ピロリン♪ (「今日昼いつものとこ集合」か…しょうがないよね) 今日は集まる日じゃないんだけど、原因は僕にあるし多分気を使わせてるんだろうし。 「はぁぁ…」ともう一回ため息を吐いて、了解のスタンプを押し次の授業の準備をした。 *** 「朱香!」「朱香、こっち」 いつも通り購買で多めにパンを買って屋上へ行くと、既にふたりはいつもの場所。 「ごめん、気を使わせて……」 「そんなの俺たちの仲じゃん、気にしない!」 「とりあえず、座って」 「う、うん」 ポンポン地面を叩く雪の隣に座ると、ふわりと綺麗な手に頬を撫でられた。 「朱香、寝てない……? クマできてる」 「目も赤いし、泣いたのか? 大丈夫か…?」 「………っ、」 (ほら、だから会いたくなかったんだ) 人前では我慢してたのに、こんなに簡単に涙腺が緩んでしまうから。 「〜〜っ、ぼく、簡単に考えすぎてた、みたいでっ」 運命は思った以上に複雑で、難しくて、大変で。 気持ちさえちゃんとしてれば大丈夫って思ったけど、でも実際そんなんじゃ全然駄目で。 今までの自分を殴ってしまいそうなくらい、自分自身に腹が立ってる。 「僕は、赤薔薇に……一条くんの運命の人に、相応しく、ないのかもしれない…っ」 僕なんかより、女の子の方がいい。 一条くんが世間体や価値観や、いろんなことで悩まなくてもいいような…心から自然体でいられるような女の子。 そのほうがきっと、一条くんもサッカーに打ち込める。 (「占いが外れることはない」って校長先生言ってたけど、多分僕らの場合は違ってたんだ) どうしよう、指輪を返しに行ったほうがいい。 けどもし返したら、僕受験せずにここ入ってるし追い出されるのかな? それは嫌だな…まだ雪や珊瑚の幸せな姿見れてないのに。 でも間違ってるなら早めに言ってあげないと、もっと一条くんの運命の人は遠ざかっていってしまう…! 「っ、ぼ、ぼく、校長先生に指輪返しに行ってくる……!」 「はぁっ!? なに言ってんだよ朱香、落ち着けって!」 「朱香、待って。お願い」 ボロボロ流れ落ちる涙を雪の指が拭ってくれて。 大丈夫だと言うように珊瑚の手がポンポン頭を撫でてくれて。 けど、それでも僕はやっぱり一条くんが大切で、幸せになってもらいたいから…だからーー 「お前らなにやってんだ!?」 「………へ? ぅわっ」 いきなりグイッ!と引っ張られたと思ったら、大きな何かに包まれる。 はぁはぁ息が上がってて、汗だくですごく熱くて、これは…… 「大丈夫か朱香っ!?」 「ぇ、一条…くん? なんで……」 「なんでじゃないだろ! 今日学食いなかったから他の奴に聞いたら購買だって言うから。けど、実際探したら教室にも居ねぇし他のとこも見つかんないからもしかしてと思って…… いじめられてんのか、こいつらに!?」 「…………え」 いじめ? 僕が雪と珊瑚に?? 「大体、前からおかしいと思ってたんだ! いっつも購買で買う量多すぎだろ、カツアゲでもされてんのか? それにまだ入学して3ヶ月なのに、他のクラスに友だちできるほうがおかしいだろ。委員会とかも始まってねぇし部活でもしない限りできねぇって。 なのにお前できてて、しかもパシられて屋上に呼び出し? テンプレすぎんだけど?? それに……泣いてんじゃん」 「ぁ、あぁーっと、これは…!」 「おいお前ら、こいつのこといじめてそんなに楽しいか……? 」 (待って待って!違う!!) 確かにすごいテンプレ通りかもしれないけど、でもパシリとかそんなんじゃなくって! パン多く買うのは僕から始めたし、雪には後でちゃんとお金もらってるし、屋上だってたまたま鍵が空いてたからで、あとはーー 「あ、そうです。僕、パシッてました」 「……ぇ」 「うんうん、実は俺ら悪い奴なんです。ごめんなさい!」 「えぇ!?」 「な、雪?」「うん」って言ってるけどちょっと待って!? 「そんな、ふたりは全然そんなんじゃ」 「「朱香」」 「っ、」 ふたりがふわりと笑って、「頑張れ」と口パクで言葉を紡いだ。 「さぁて、じゃあ悪者は退散すっかな!」 「うん。退散する」 「は? 待てよ、まだ話は終わってねぇだろうg」 「話は俺らじゃなくて朱香にあるんじゃねぇの?」 「朱香のこと、これ以上泣かせないで。ね」 「ーーっ、」 言葉で、僕の背中を押してくれて ふたりは静かに立って、屋上から出ていった。

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