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「着きましたね。
ここが横丁……情緒溢れる感じありますね」
「っしゃ、食うぞ」
「こらちょっと」
2日目。
いろいろと観光名所を回って、気になってた横丁に到着した。
「あん? こういうとこはやっぱ旨いもんだろ。
んな情緒溢れるとか言ってる場合じゃない」
「いやいやあなた仮にも教師でしょうが、しかも鬼の。
もっと感想無いんですか?」
「早くご当地ものを食い倒したいです」
「ガキか」
ほら行くぞーと歩き始めた俺の後ろを「はぁぁ……」と溜め息吐きながらついて来る古谷。
結局、昨日の話はあれで終わった。
中途半端だから、恐らく今日の夜また話すつもりなんだろう。
(次は俺の番、か)
〝俺の答え〟
卒業してから学園に戻ってくるまでに出した、俺の答え。
それをお前に話せるほど……正直、俺はまだ心構えができてない。
だが………
(あぁーいかんテンション上がんねぇ。とりあえず今は楽しまなきゃ損だろ!夜までまだ時間はあるんだし、なんか旨いもん食いながら考えてーー)
「ぱぱっ?」
「………は?」
クイッとズボンを引っ張られ下を見ると、俺の膝くらいの身長の子。
「ふぇ、ぱぱじゃ、ない……っ」
「あ、あぁ〜そうかパパじゃなかったか!
残念だったな〜〜よっこいしょい!!」
「わぁっ!」
ぶわぁっと涙が一気に膨らんだのが見えて、思わず抱き上げる。
迷子、迷子かーやべぇな、案内所は何処なんだ?
「真逆ですね、位置」
「え」
「案内所ですよ。ここの真逆にあるみたいです、ほら」
古谷がバサっと広げてくれたパンフレットには、確かに今いる場所と逆の位置が記されていて。
(まじかよ……)
真逆…か……
「なら、そこ向かいながらパパ探してやっか」
「そうですね。その方が一石二鳥かと」
「よし」
じぃっと見つめてくる濡れた瞳に、ニカっと笑ってやる。
「いいか? 今からおじさんたちが抱っこしながら歩いてあげるから、君はちゃんと周りを見てパパを探すんだ。
すぐ会えるから、おめめ拭いて安心しような?」
「すぐ…あえる……?」
「会えるよ。大丈夫です」
「……っ、ぅん!」
「っし、じゃあ行くか」
***
案内所へ向け歩きながら、その道すがら美味そうな露店で手軽な物3人分買って食べながら進んで。
「わり、ちょっとトイレ」
「分かりました。見てるんで気になさらずにどうぞ」
抱いてる子どもを古谷へ任せ、丁度あったトイレへ向かった。
(はー……なんか、こういうのってあるんだなぁ)
漫画や小説じゃザラだが、まさか自分たちがそれを経験するとは思わなかった。
ま、旅行にトラブルは付きもんだしこれはこれで楽しめってか?
(でも、早く親んとこ返してあげねぇと可哀想だな……)
きっと向こうも心配して捜してるはずだ。
案内所までもう少しだし、後はこのまま寄り道せずに行って……
「ーーっ、ぁ」
トイレから出た先。
すぐそこで古谷が迷子の子と楽しそうに遊んでいるのが見えて、ドクリと心臓が跳ねた。
古谷の表情はすごく柔らかくて、優しくて。
子どもも安心して古谷と一緒に笑ってて。
(あぁそう、これだよ)
俺が、どうしても言えない答えは。
今日話をしないといけない、ことは。
あいつに聞かないといけない……質問はーー
「あっ、パパ!!」
「っ、」
大声で叫んでいる男へ、一直線にかけていく子ども。
その背を眩しそうに見つめる古谷の瞳と、その表情。
(……やめてくれよ)
俺は、俺は
俺はーー
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