「はぁぁ……」 「…なんなの最近。 ため息多すぎていい加減に飽きたんたけど」 「悪りぃって。でも…はぁぁ……」 (うっざ…溜め息吐きたいのはこっちなのに……) 食堂までの道のり。 今日は、たまたま白薔薇の運命の奴と一緒。 「なんなのさ、最近楽しそうだったじゃんどうしたの？」 「……俺には、なにが無いんだろうか」 「え、今さらその話？」 「あぁ…？」 「無いものばっかでしょ正直。 まぁそこに気付けるようになっただけでもまだマシになったんじゃなiーー」 「おい！俺に無いものってなんだ！？ 知ってんなら教えろよ！ それがわかんねぇと、俺は…白薔薇のあいつと……」 (あぁ〜なるほど、そういう事ね) こっちもなんか接触して言われたわけか。粗方なに言われたかはなんとなくわかるなぁー察し察し。 ってか、最近緑薔薇ばっか追ってたから他の薔薇ちょっと置きっぱにしてたくないか！？ なんでことだ！やばいな薔薇ヲタクの僕がなんて失態！？ (こりゃ、今からでも他の運命の人たちに動きがないかチェックをーー) 「あぁ〜！桃薔薇の先輩、こんにちは〜〜！」 「うっげぇ……」 着いた食堂で真っ先に入ってきた声。 もはや見なくてもわかってしまう、偽の桃薔薇の子。 今日も、猫なで声で桃薔薇の運命の人の腕へぎゅうっと抱きついていた。 「………ねぇ、やっぱ食堂やめない？」 「……そうだな。購買にすっか」 チラリと食堂内を見たけど、桃薔薇のあの子はいない。 今日も屋上かな？ (まぁ、普通は見たくもないよねこんなの……この時間帯ならあの子たちは購買使った後だろうし、こいつ連れて行っても大丈夫だな) なんとなく、今これを見たい気分じゃない。 それは隣のこいつも同じだったらしい。 せっかく来た道を引き返しながら、ついポツリと声が漏れた。 「〝運命〟って、そんなに大事なのかな」 「あぁ……？」 「…ぇ、ぁ、ごめっ、なんでもないから」 薔薇ヲタクの僕がなんてこと言ってんだ！？ 一瞬変な自分になってた、最近の僕本当おかしいどうしたんだろ？ 馬鹿すぎであぁーもうほんと。 「大事に決まってんだろ」 「っ、」 「だって」 いつも自信家なそいつの口調が、不意に柔らかくなる。 「人生において、1番の宝物と出会うんだからよ」 「ーーっ、」 (あぁ、そう……か) 僕は、自分が好きだ。 母さんも父さんも兄弟たちだって好きだし、だから別に今を恨んじゃない。 傍観者として眺めるこの学園の特徴も好きだ、それが好きでここに来たんだし。 これが、僕。僕の人生。 その人生の大切な部分が、例え三船先輩と交わってなくても。 ーーそれでも、これが〝僕〟なんだ。 「つうかさっきからなに言ってんだお前。 いっつもうっせぇのに今日変だぞ？」 「あははだよねー自分でもそう思う、今日の僕まじで変！でも……なんか、スッキリしたかも」 「おぉ？ まぁ…ならいいけど」 これから、僕らの人生はきっとまだまだ続いていく。 だって人生100年と呼ばれているこの時代で、まだたったの17歳18歳なのだから。 (先輩のこの先の人生において必要なのは、僕じゃないんだ) きっと彼女のような、一生懸命夢を追ってる明るい太陽みたいな人。 それは彼女にとっても同じで、これからの人生で必要なのは先輩のような穏やかで優しい人なんだろう。 そして僕にもきっと、これからの人生において必要な人が、先輩とは別に……現れるんだろう。 だからーー (ははっ) この切なくて甘酸っぱい〝想い〟には このまま、蓋をしておこうと 思う。