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「アーヴィング様!」
「リシェ。休憩か?」
「はいっ」
運命の番を見つけてから、休憩時間は訓練場へ行くのが日課になった。
ちゃんと薬を飲んでるから倒れることはもうない。
けど、どうしても熱くなる身体はどうしようもない。
(やっぱり運命だから効きづらいんだろうなぁ)
アーヴィング様は僕より10歳ほど年上で、出会った日から少しづつ話してくださるようになった。
パドル様のもとで勉強してると言うと「あの人は厳しいだろ? 俺も入りたての頃よく怒られていた」と苦笑しながら教えてくれて。
今日も、近寄った僕の頭に大きな手が伸びてくる。
背が高いからかな? どうも頭を撫でるのが好きみたい。
「これから王妃様のもとへ?」
「あぁ。もう少ししたらな」
暫く城にいるらしい彼は、王妃様の護衛に任命された。
騎士団長で且つ鼻が効かないのは、自分の番を安心して任せるに適任だったらしい。
(いい、な)
僕もあなたと一緒にいれたらいいのに。
運命というのは確かにあるけど、日に日に惹かれてる自分がいる。
大きな手とか、優しい体温とか、低い声とか……
匂いだって落ち着くし、離れたくない程安心する。
そんな彼が護衛するのは別のΩ。
大丈夫。ちゃんと仕事だって分かってる。
けど……
「運命の番だ」と告げる気は、まだ無い。
パドル様は僕を王妃にするのを諦めていない。
そんな中告げて、もし何か大変なことが起きてしまったらーー
(っ、駄目だ)
不安が残るまま動くのは危険。
今、この国はとても大切な時。
我慢して、慎重に見極めてなくては。
「さて、もうひと試合してくる」
「見ててもいいですか?」
「勿論。リシェがいるなら勝たねばな」
「っ、ふふ、頑張ってください」
戯れでも、そんな言葉が嬉しくて。
今日も眩しいくらいにかっこいい姿を、眺めていた。
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