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作戦決行の、日。 「では、会議を始める」 陛下の声で全員が着席した。 この会議は、あの子を正式に王妃へ任命するもの。 城の者たちの同意が必要な中、パドル様のみ中々許可を出さなかった。 だが、先日の夕食で僕が去った後「許可します」と話したことにより、この場が設けられた。 部屋には城の者は勿論、陛下や王妃様、アーヴィング様など様々な方が参加している。 僕も、パドル様の隣に座っていた。 「ではパドル。サインを」 渡された紙へ即座に名前を書き、自ら持って行く。 (もうすぐ、後…少し……) まだだ。合図があるから、まだ。 チラリと見た例の兵士の位置。 あそこなら、少し早めに動いたほうがいい。 ヒヤリと汗が背中を伝い、緊張で震える拳を握る。 こんなんじゃ動きが鈍る。ただでさえこの頃体力が落ちたのに。 (集中して。大丈夫、絶対大丈夫だから) そっと息を吐き、気づかれない程度に腰を浮かす。 陛下の元へ辿り着いたパドル様が、書類を提出した ……途端。 「っ、なに!?」 足を引っ掛けて転ぶように、座っている陛下へ襲いかかり身体を拘束した。 その様子に兵士を始め皆の視線が一気に集中する。 瞬間、1人の兵士が真っ直ぐ王妃様へ向かっていってーー ズプリ 「きゃあぁぁ!」「な、何が起こっている!?」 深く刺さった剣は、身体に食い込み鮮血を溢れさせる。 それがボタボタと……〝王妃様〟の顔に、落ちてーー 「ご、無事ですか? おうひ、さま」 「……ぇ、なん…で…………」 「リシェ!貴様ぁ!!王妃を押さえろとあれ程ーー」 「捕えろ!」 陛下の声でパドル様と兵士を拘束するのが見える。 確実に捕まえる方法は、どう頑張ってもこれしか浮かばなかった。 僕が失敗させれば彼は確実に怒りを露わにする。 その瞬間が、何よりの証拠となる。 (良かっ、た……終わ、っ) 「嘘…でしょ……ねぇ!」 刺さった剣が思いの外重く、耐えきれずにガクリと倒れ込む。 「無事か!すまない油断した!」 「ぼ、僕は平気……でもこの子が!」 「まずはお前だ!医務室へ連れて行く」 「ぇ、待っ!!」 ガバリと王妃様を腕に抱き、陛下が走り去る。 (それで、いい) あの子は、多分無傷だ。 身体に付いてる血は全部僕のもの。 だから、大丈夫。 ーーずっと、何故Ωが2人現れたんだろうと思ってた。 でも、恐らく。 (こうやって守る為、だったのかな) 王妃様の盾となり、この国の滅亡を防ぐ為。 明るく平和な国にする為。 民に…皆に、幸せが訪れる為。 その為に僕は生まれ、 そして僕の運命の番は嗅覚を無くし別の誰かと番うんだと……思う。 (アー、ヴィング……さま) 段々寒くなっていく中で浮かぶ、大好きな人。 懸命に探すと、呆然と立ち尽くす姿があった。 ねぇ、アーヴィング様。 あなたの守る国を、僕も守れましたか? ーー嗚呼、どうか。 (あたま、なでて……ほ、し) 視界が闇に溶ける中、低い声が自分の名前を叫んでくれたような、気がした。

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