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「なんかさ、僕たちこうやってゆっくり話したことなかったよね。 来る時も緊張しちゃってお互い無言だったし」 「そうですね。 馬車の中、すごく静かでしたね」 「ね」 いろんなことが一気に起こって、もう何年も前のような感覚。 「王妃様は、いつ僕とアーヴィング様が運命の番だと感じられたのですか? アーヴィング様からお伺いした時、本当に驚きました…」 「あぁそれはね、んー……なんだろう。 いろいろ浮かんでた疑問が解決していったっていうのもあるかもしれないけど、1番は直感なんだよね」 今でも覚えてる。 あの、廊下で話したときの本能から来る訴えを。 「多分、Ω同士分かり合えるものがあるんじゃないかな」 「なる…ほど……?」 「ってかさ、僕敬語いらないんだけど」 「ぇ、」 布団から出てた手をキュッと両手で掴む。 同じくらいの手の大きさ。 背丈だってあんまり変わらないし、歳だって同じ。 「元はと言えば同じ馬車で来たんだし、隣に並んでたんだし。なのに敬語はやだ、タメ口がいい。 後〝王妃様〟じゃなくて〝ロカ〟って呼んで欲しいな。 僕もリシェって呼んでいい?」 大分順序がおかしいけど、今更自己紹介。 この国に2人しかいないΩだし、なによりアーヴィングの番だし、すっごく仲良くしたい。 これから親友というか相棒というか、そんな関係になれたらいいなぁと考えてる。 (相談とかも全然乗るし、乗って欲しいし) 僕よりもずっとお淑やかで優しいこの子と、ずっとずっと一緒にいたいなと思う。 「だめ……?」 「ぇ、そのっ、王妃様は王妃様なのでそんなのは」 「役職とか関係ないから!お願い! ロカって呼んで欲しいよぉ〜……」 「うぅぅ……っ」 視線を右左に動かしてオロオロする子を、じぃっと見つめる。 やがて、 「………それでは、〝ロカ様〟とお呼びしても…よろしいでしょうか」 「……敬語は?」 「それは、おいおい……」 「……………」 わぁ、なんだろう。 なんかこれ凄い既視感。 (そうだ、ラーゲル様だ) 僕もラーゲル様に同じことしてるんだった。 そして未だに敬語なしで話ができてない。 (そうか、される方はこんな気持ちになるんだ) 人のこと言えないやつじゃんか。 僕も早くなんとかしなきゃなぁ…… 「…うん、分かった。 けど、慣れた頃にまた聞くからね? いい?」 「は、はぃ」 よし。 まぁとりあえず、長期戦といこうかな。

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