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リクエスト2 リシェが元気になってからの話
リシェが元気になってからの話
※後日談2後の時間軸です。
【side リシェ】
拝啓、心配してくださっている皆さま。
僕は今日
「おめでとうございます、よく頑張りましたね。
完治しました」
ついに、元気になりました。
「これからの検診は月に一度ほどでいいですよ」と言われた。
もう自由に城の中を歩いたり走ったりできる。
いつも来てくださるロカ様の元へ次は僕が行ったり、気になっていた広い庭をたくさん堪能したり、訓練場の兵士たちにもまた会いに行ったりしたい。それから……
ーーアーヴィング様とも、ようやく身体を繋げられる。
(わぁ…ど、どうしよ……嬉しいけど、緊張が……っ!)
医師からも「よく我慢しましたね、もう大丈夫でしょう」とお墨付きをいただいた。恥ずかしすぎて真っ赤になる僕に、周りの看護師たちも笑っていて。
えぇっと、先ず何をすればいいんだっけ?
準備ってどうするんだっけ? えっと、とりあえず風呂?
ロカ様は確か事前に身体の節々を伸ばしてたほうがいいって言ってたような…準備運動もしとこう。
後それから、それから…………
今日アーヴィング様が部屋に戻るのは、夕方を過ぎて。
まだまだ日は高く登っているし、時間はある。
頭の中で浮かぶ様々なことに顔を赤くしながら、早足で自室に向かった。
「では、風呂に入ってくる」
「はいっ」
夕食を終え、いつものように風呂へ向かう背中を見送る。
ーーさぁ、これからだ。
(僕が、伝えなきゃ……っ)
嗅覚があれば、きっとすぐにバレていたかもしれない。
それぐらい自分の匂いが濃くなってるのが分かる。
発情の周期は医師と共になんとなく把握はしてるけど、きっと今日は例外。
身体が、Ωの性が、抱かれたくて仕方がないと蠢いている。
「っ、はぁ……っ」
吐き出す息が思いの外熱く、立ち上がれなくなる前にベッドへ向かった。
嗅覚のない番に、自分の口から告げなければ。
(恥ず、かしぃ……けど)
伝えたらどんな顔をしてくれるだろうかと考えると、ふわりとした想いが広がる。
もうずっと待っていてくれる、優しく強い人。
我慢をたくさんしてくれ、献身的に支えてくれた。
そんな愛する人と、ようやく繋がることができる。
ーーそんなの、嬉しすぎて泣いてしまいそう。
「アー、ヴィング、さま……っ」
ポツリと呟けば、また一気に身体の熱があがり後孔がトロッと濡れる感覚がした。
(ぁ、溢れて、シーツに付いちゃ……)
「はぁ……ぁ、ひぅ……」
本格的に始まった発情。
熱くて熱くて、ぎゅうっと自分の身体を抱きしめて耐える。
身体が、抱かれる準備をしている。
あの方が風呂から戻ったら、僕は抱かれる。
抱かれるんだーー
「はぁ……っ!」
(先ずは、ちゃんとこの状況を説明しないと)
きっと驚いてしまう彼に、「大丈夫」だと。
完治して、身も心も貴方を求めてしまってるのだと。
だから発情していて、変になったのではないから心配しなくていいと。
ちゃんとーー
「上がったぞ」
「っ、」
彼が部屋に戻ってくるまで、あと少し。
緊張してヒュッと鳴る喉を、唾を飲み込んでなんとか落ち着かせる。
いよいよ、ようやく…やっと、待ちに待った………
「ーーっ、リ、シェ?」
「アーヴィング、さま……っ」
驚いているその顔を見て、名前を呼んだ 瞬間。
これまでの出来事が走馬灯のように一気に頭を駆け巡ってきて
「〜〜っ、ぁ、の」
説明よりも先に、涙が溢れてきた。
〜fin〜
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