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リクエスト9 リシェとロカがお忍びで番のため街へプレゼントを買いに行く話 1
リシェとロカがお忍びで番のため街へプレゼントを買いに行く話
※ロカの出産後のもの。ここまでの話の中で一番新しい時間軸です。
【side ロカ】
「リシェ!早く早く」
「ロカ様っ、そんな急がなくてもゆっくりで……!」
ゆっくりなんて、とんでもない!!
(全部堪能してやるんだからっ!)
出産も無事終わり、やっと一息ついたこの頃。
出産は初めてということもあり緊張したけど、周りの助けもあってなんとか乗り切ることができた……でも、正直怖かった。
自分は本当にΩなんだと改めて自覚した、そんな日の中で。
(街に、行きたい……っ!)
城へ来てパドル様のことがあって、リシェが目が覚めるのを待ってる間に妊娠して。
そんなこんなで、これまで城から出たことが無かった。
元々村の出身だし、活発な方で外に出ない日は一度も無かったのに…そんな僕が、まさかこんな生活をしているとは……!
そんなことがハッと頭に浮かんで、街に行きたい欲がどんどん膨らんでしまって。
陛下はこの頃忙しそうだし、リシェを誘ってみた。
そしたらすんなり『いいですよ』と返ってきて。
『あ、ねぇねぇ!2人で行くなら互いの番にプレゼント買おうよっ!
日頃の感謝というか、いつもありがとうって気持ちで』
『わぁ、いいですねっ』
『どうせなら驚かせたいよね。内緒で行くのはどうかな。厳しい…かな……』
『んん……兵士に頼んでみましょうか。プレゼントを買いに行きたいと話したら、内密で着いて来てくれそうな気がします』
『よしっ、じゃぁ聞いてみよう!兵士のことはリシェのほうが詳しそう』
『そうですね、数人声をかけてみますね』
そんなこんなでサクサク決まっていき、当日。
子どもは乳母が見てくれるらしい。「羽伸ばして来なさいな」と背中を押された。
僕らに着いてくれた兵士は、どれも名の知れた強い人たち。
リシェと兵士の絆は相当厚いみたい。流石だなぁ。
(これなら、多少は怒られるのも軽減されるかな……?)
いやお互い怒られるのはもう承知の上なんだけどね……
ーーでも、
チラリと隣を見ると、僕と同じく楽しそうに周りを見てるリシェ。
(良かった、少しは元気…でたかな?)
体調も回復し、アーヴィングと身も心も繋げ番となった。
けど、一向に妊娠する気配がない。
本人もそれを気にしているようで、時折り泣きそうな顔をしている。
妊娠中の僕の補佐として一緒にいるのは辛くないかなと思ったけど、それで気を遣ったらもっとリシェが辛くなるだろうと思って極力いつものように接していて。
そんな沈んでしまったリシェが、少しでも気分転換できたらなぁとも思う。
(今日の目的は、なんだかいっぱいあるなぁ)
兵士たちも多分そんなリシェのことを思って、少しでも楽しんでもらえたらと了承してくれたのかも。
よしっ、それだったらめいっぱい楽しまなきゃね!!
門限は、ラーゲル様とアーヴィングの仕事が終わる時間の少し前まで。
(それまでたくさん歩いて珍しいもの見て、美味しいもの食べて、プレゼント探すぞっ!)
「あ、リシェこれ美味しいっ!ほら」
「んっ、本当だ!ロカ様も僕の方食べますか?」
「食べる!ちょうだい〜」
露天で見慣れない食べ物を買って、食べながら観光して。
僕がいた村と大分違う景色。
行き交う人も多くて、売られてるものも多くて、本当に楽しい。
「もう少し先に市場がありますよ。店の数も増えますので、プレゼントも何か見つかるかもしれません」
「わぁ、ありがとう!行ってみよう!」
「はいっ」
兵士がそれとなく案内してくれ、市場を目指し歩いていく。
「そういえば、ロカ様は陛下に買うものを決めましたか?」
「いや、それが全然で……何にしようかなぁって」
ラーゲル様はなんでも持ってる。
宝石・服・剣・その他諸々。しかもそのどれもが一級品、当たり前なんだけどさぁ。
そんな人にプレゼントって、一体何をあげれば……
(まぁ、着いた先で探すか)
何かいい出会いがあればいいけど……
「リシェはもう決めて来たの?」
「おおよそは」
「そうなんだ!お目当てのもの見つかるといいね」
「そうですね……ぁ、ここからが市場じゃないですかっ? 空気が全然違う!」
「う、わぁ……!」
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