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5.ヒロとリュウ2
いつの間にか、陽が落ちていた。
ホームで待ってるとき、遅くなるって電話したから、今日は大丈夫。
あの時と違って、怒られない。
「ヒロ、リュウは元気にしてる?」
少し前を歩く、あの頃よりも大分背の伸びたヒロに声を掛ける。
「そう言えば、会えたのが嬉しくて、話しそびれてました」
振り返った顔が、少し切なく見えて、……何故だろう胸がきゅっと締め付けられる。
「先月、…死んじゃいました」
「……ぁ…」
「19歳で、…人間にしたら90歳以上のおじいちゃんだったって。老衰で大団円だから、笑顔で送ってやりなさいって。……でも、そんなん関係ねぇよ。じじい犬でも、死んじゃったら笑ってなんかやれねぇよ」
「…ヒロ……」
「───とか思って、しばらくふさぎ込んでアルバム見たりしてて…。そしたら、あなたのことを思い出して…、一緒にリュウを探してくれた、優しい女の子がいたな。可愛かったなぁって」
「やっぱり女だと思ってたな」
「ごめんなさい」
謝罪は言葉だけで、悪びれもせずにえへへと笑う。
「思い出したら、あなたのことで頭がいっぱいになって、気づいたら……リュウのことは、優しい想い出になってた」
腕を伸ばして、後頭部をヨシヨシと撫でてやる。
図体ばっかデカくなって、中身は目に涙いっぱい溜めてイヌを探してた、あの頃のまんま、か。
「アリスちゃん…。もし良かったら、リュウに線香、あげてやってくれませんか?」
不安げに、瞳を覗き込んでくる。
ここまで連れてきておいて、漸くそれが本題か。
遅ぇよ。用件忘れてるとかって、テンション上がり過ぎだろーが。
「あげるよ。でもその代り、俺のことは蓮って呼べよ。次アリスちゃんって呼んだら、ボコるからな」
「───うん!ありがとう」
前髪をぐしゃぐしゃと撫でまわす。
ヒロは嫌がりもせずに、嬉しそうに笑った。
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