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6.好きになってしまいました1

ヒロの家は、隣の駅から10分くらいの住宅街にあった。 一軒家かよ。羨ましい…。 こういう家には、しあわせいっぱいの家族が住んでいるのだと思っていた。 門の脇に見えた犬小屋は、主が不在のまま……ぽっかりと穴をあけたままだった。 なんか、堪んなくなって、全然関係ない話題を探してみる。 そう言えば───同じ沿線に乗ってて、どうして今まで会わずにいたのだろう。 訊くとヒロは、「俺が乗る場所、いつももっと後ろの方ですから」と答えた。 うちの駅の改札は上り寄りだけど、こっちの駅は下り側の端にあるんだっけ。 今日は、友達ん家に寄ってひとつこっちの駅から乗ったから、いつもと違う車両にいたらしい。 リビングの隣の和室に通された。線香に火を付けて、リュウの遺影に手を合わせる。 少し待っていてくださいと言うから、置いていったアルバムに手を伸ばした。 19歳…って言ってたか。 ヒロが小さかった頃の写真のリュウは、当たり前だけどもう大人のイヌだった。 生まれたときから一緒にいたイヌ。 ペットと言うより、家族だったんだろう。 大型犬のリュウの背中に、ヒロが笑顔で跨ってる。 リュウも全然嫌な顔をしていない。むしろ、愛おしそうに…自分の弟か何かのように……。 これ、リュウのお腹でヒロが寝てる。 2人とも可愛いなぁ。 こっちの写真は、ヒロが大分おっきくなってる。 小学生?…この頃かな、俺と会ったの。 あ、小学校の卒業式の写真だ。校門までイヌ連れてくなよ~。 中学校の入学式の帰り、かな。 家の前で入学式の胸飾り付けて、リュウと一緒に写ってる。 転がったバスケットボールで遊ぶリュウ。ヒロとリュウの自撮り2ショ。これは…、リュウの19歳の誕生日ケーキ…。 こんなにずっと、一緒に生きてきたんだもんな……。 いなくなったら、悲しい。淋しいよな………。 「お待たせしました。コーヒーと紅茶淹れたんですけど、どっち飲みます?蓮さ──」 「う…、ごめ……」 零れ落ちた涙を慌てて拭う。 「蓮…さん……」 「や、アルバム見てたら、なんか…」 テーブルに、飲み物の乗ったトレイが置かれた。 慌てたように乱暴に置くから、揺れたマグカップの中身が少し零れる。

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