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8.好きになってしまいました3

ヒロの体から力が抜けた瞬間、慌てて下から抜け出した。 「ばかっ!重いんだよ、ばかっ!!」 窓際に寄って、クッションを盾に身を潜める。 「え……、あ……、俺っ……」 漸く事の重大さに気づいたのか、ヒロは口元を押さえ、顔色を青くさせた。 その顔を見て、…まぁ悪意はなかったんだろうな、と理解した。 男と男だ。端から襲うつもりで部屋に連れ込んだわけじゃあるまい。 リュウに線香をあげて欲しいって気持ちに、嘘偽りはなかったんだろう。 だけどな、お前、そのリュウの遺影の前で……… 「淋しいからってなぁ、誰彼かまわずサカってんじゃねーよ。相手が女だったら、抵抗出来ないし、泣かしてたとこだぞ」 「……すみません。でも俺っ、女の子にこんなことしません!」 ……男なら、嫌なら振りほどけるだろってか。 表情から気持ちを察したのか、 「男なら余計しません!」 ヒロは必死に訴えてくる。 「分かったから、それ以上こっち寄るな」 「っ――……すみません…」 「傷ついたみたいな顔してんじゃねーよ。俺のが傷モンにされっとこだったんだからな」 「はい……」 「別に、嫌いになったわけじゃねーから。…警戒はしてるけど」 一瞬輝きかけた瞳が、しゅんと落ちて伏せこんだ。 ずっとリュウと一緒に暮らしてたせいなのかな。 なんか、行動がイヌっぽい。 「なんで俺ならいいと思った?軽そうだから?流されそう?男好きそう?言っとくけどな、お前と出会った頃だって、フツーに女の子好きだったんだからな」 未だ落ち込んだ顔で、すみません、と何度目かの謝罪を口にする。 「俺……、貴方なら別にいいだろうって、そんな風に思ったんじゃないんです」 顔を上げる。拳をぎゅっと握りしめるのが見えた。 「すみません!」 思い切り、頭を下げられた。 悪いことをしたと、分かってくれたんだろう。こんな風に謝るなら、きっともうしないな。 そう感じて、許すつもりになった。 もういいよ、と声を掛けようと口を開きかけた。 その瞬間─── 「貴方を好きになってしまいました!!」 「…………っ!?」 その真っ直ぐな瞳と、真っ直ぐな言葉に、俺は返す言葉も見つからずに、暫くその場で固まっていた。

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