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11.俺を取り巻くヒエラルキー1
「はよー」
「おっ、れんちん、おっはよー」
「んー、おはよ」
教室へ入り、自分の席に着く。
なんか、やっと落ち着いた。
朝は、電車も道も、下駄箱も廊下も、どこも混雑してて目が回る。
一時間目の用意も取り敢えず、机に突っ伏してリラックスしてると、肩をトントンと強めに叩かれた。
「んだよ…」
「ねえ、さっき一緒に歩いてたの、誰!?」
クラスメイトのヒトミだ。
ティーンズ向けファッション誌で、ハーフモデルとして活躍中。
俺らん中では、通称モデ子。
その肩書き通り、派手めな外見をしてる。
自慢のブロンドヘアは自前ではなくブリーチだとか、青い目はカラコンだとかは公然の事実だが、それを口に出すのは御法度らしい。
芸能人はめんどくさい。
「隣のクラスのコウジだけど」
「じゃなくて!渋谷駅で!」
「渋谷…?あ、2年の野坂と会った」
「じゃねーよ。うちのイケメンはもうどーでもいーんだよ」
うちのイケメンて……。
確かに、2人ともイケメンはイケメンなんだけど。なんでか同級生にはモテないらしい。
女と男のいい奴の価値観は違うのかもしれないな。
俺的には、同士よ!!って感じで、話してても楽しいし。ホント、いい奴らなんだけど。
顔もスタイルも良くてスポーツも得意なのに、なんでモテないのか不思議だ。
……俺も含め。
「乗り換える前、背の高いイケメンと一緒にいたでしょ?改札出るまで。なんかイケメン、改札でアンタ見送ると戻ってったけど」
ああ、ヒロのことか。あいつ目立つもんなぁ、デカくて。
「アイツが何?」
「なに、じゃねーよ!また独り占めかよ!」
「はぁ?」
なんだ?独り占め…?
「で!?誰?」
「妹の学校の先輩だけど。俺らの1コ下」
美人が睨むと恐ぇな…。
「そうなの~。背ェ高いよねー。イケメン」
つか、ツケマ重そうだな。
俺のまつ毛だって度々視界の邪魔になんのに、あんなぶ厚いの付けてて目ぇ疲れねーのかな。
「紹介してよ、あのイケメン」
「あー…、イケメンだけど、あいつちょっとヘンタイだぞ」
「……ヘンタイ?」
「俺のこと好きなんだってさ。でもイイ奴だから、友達としてはふつーにアリだけど……ん?」
なんだ?モデ子の奴、変な顔して……?
「またかよ!」
「なにが?」
「くたばれ!この淫乱!ビッチ!!」
「いんら…っ!?」
捨て台詞を叩きつけて、モデ子はドスドスと足音荒く去っていく。
(注意 電車を乗り過ごした場合、乗り過ごした駅までの運賃が追加で発生するそうです。この為、恐らくヒロは定期券を終点駅まで購入しているものだと思われます。大好きな蓮さんのために…!!)
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