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20.最下層の罠2

1人か、つまんねーな。 陽太とか、あっち系の友達も部活だとか言ってたし。 チャラいくせに真面目に部活とかすんなよなー。 足で蹴り上げて上履きをしまう。 俺、器用。 上手く下駄箱に収まったタイミングで、ブルブルとスマホが震えた。 『これから部活です。頑張ります。』 ヒロからメッセだ。 返事、出してないのに……。 朝のお迎えの時も思ったけど、毎日毎日飽きもせず、良く続くよな。 回数は、減ったけど。 マメ、なんだろうな。 マメな男はモテるって言うし、イケメンで長身とかって、絶対女の子にモテるし…。 ヒロは父子家庭の2人暮らしだから、夜は自分でご飯を作って食べてるらしい。 今晩はハンバーグです、とか、オムライスです、とか。 毎日写真で送られてきて、女子かよ!って返したこともある。 そう言うの、無くなったな……。 昨日はなに、食べたんだろう。 別に、迷惑じゃないのに。 最近は、おはようと部活です、だけだ。 俺じゃなくて、…他の子に送ってるのかな。 夜、おやすみって、送ってみようかな…。 おかしくないよな、友達なんだし。 ………いやいやいや、俺が連絡しないって言ったんだから、俺から歩み寄ってどうするよ。 大体、あんな浮気現場見せられて、……いや、付き合ってないんだから浮気じゃない…んだよな。 あれはただ、女の子抱きしめてただけで…… そもそもヒロの奴、抱きしめるんなら女じゃなくて、俺の方じゃないのか。 好きだとか言ってんだから。俺にはいきなり襲い掛かっておいて、女の子の方にばっか優しくするとか…… お前が優しくしてくれるんなら、俺だって………ん…?はぁっ?なんだよ、俺だって、って! なんだよもう!なんだってんだよもーっ!! 最近ヘンだ。ヘンなことばっか考える。絶対ヒロのせいだ!! 下駄箱にカバンを叩きつけた。 落ち着け、俺。修正修正~。 俺は抱きしめられる側じゃなくて、抱きしめる側だからな。 俺の相手は、ヒロじゃなくて女。可愛くて可憐で純情そうな色白の女~。 「……有栖川君」 「っせーな、男はすっこんでろ!」 後ろ回し蹴りをしかけて、慌てて回転を止めた。 「あー…、ワリ。気が立ってて」 えーと…確かこいつは同じクラスの……、 「永沢…?」 「中田だよ、有栖川君」 あー、それそれ。日曜6時の某○子ちゃんのとこのタマネギ頭に似てるもんだから、ついつい間違えちゃうんだよな。 「ワリィ。で、なに?」 「君だけ来ないから、どうしたのかと思って」 「何処に?」 「グラウンドの体育倉庫だよ。君、この前の体育休んだだろ。先生がその週の欠席者に、補習の代わりに掃除しろって。話、行ってない?」 「えー?なんで」 「長距離のタイムを取ってないから、その代わりだよ」 「……めんどい」 「やらないと、1学期赤点だよ」 折角、長距離走らないでいいように保健室の龍司さん懐柔したのに…。 走んのもやだけど、掃除もやだ。 渋っていると、手を掴まれた。 「っせーな、行くよ。触んな」 「っ……ごめん…」 こいつ、しゃべったことあったっけ? しょうがないから、永田の尖った頭を見下ろしながら追いかける。 いきなり手ぇ掴むとか、馴れ馴れしくないか。 会長もそういう話あんなら、早く帰れじゃなしに、教えてくれりゃあいいじゃんか。いつもはもっとさぁ……… ───っ……待てよ………? グラウンドの倉庫に、3人の男。 俺が入ると、永田が後ろで扉を閉める。 「…掃除って、なにすりゃいいの?」 声が、わずかに動揺して震えた。 会長は2年の時から同じクラスで、俺やレイジが補習をサボって帰ろうとすると、いつも引きずってでも参加させた。 俺もレイジも、会長のお蔭で3年に進級できたようなもんだ。 それに、あの日持久走サボったのは、俺だけじゃなかった。 「2人揃って、ホントはサボりじゃねーの?」 「ホントにお腹痛いんだもーん。龍司さん、おねがいっ。寝かして!」 「本物の病人寝てるから、今ベッド1コっきゃ空いてねーぞ」 「平気でーす。蓮と一緒のベッドで寝るから」 「えー、やだ。狭い」 「お前ら、エロいことすんじゃねーぞ」 「しねーよっ!」 「覗かないでねっ」

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