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22.最下層の罠4
バリーンッ───
それは、ガラスが割れる音だった。
バリン バリン───
出口の扉、割れたガラスの隙間から、長い腕が差し込まれた。
カチリ、と音をさせて、その手は内側から鍵を開ける。
「蓮っ!無事か!?」
「レイ…ジ……?」
肉塊の手が離れて、床に放り出される。
扉が、蹴り開けられた。
目が合う。
「ヒーロー見参、ってね」
レイジは安心させるよう頷くと、中の男たちに視線を流した。
「運動部が4人がかりか…。随分と卑怯な真似してくれるじゃねーか、テメェら」
「お前らがっ、しゃべらせないからだろーが!」
猿が、キーキー声を上げる。
「ああっ!?」
「そうだ!こうでもしないと口もきけない!」
肉塊のくぐもった声。
「友達になるのもムリだって言われた俺たちの気持ちがっ、お前に分かるのか!?」
「わかんねーよ、クズ共!」
レイジが、バン!と扉を蹴りつけた。
キャッと小さな悲鳴が聞こえた。
騒ぎを聞きつけて、人が集まってきたのかもしれない。
「蓮、行こう」
レイジが手を引き起こしてくれる。
「あ、俺のスマホ…」
「もー、蓮ちゃんたら、こんな時にスマホの心配?」
ふざけて、和ませてくれようとしてるのか。
「あれが無いと、ヒロからのおはようメッセ、来ても分かんないから」
「……こんな時は、助けに来た俺のことだけ、考えてほしいな」
転がっていたスマホを拾って、確認する。
大丈夫、壊れてない。
ホッと胸を撫で下ろした。
「んじゃ、さっさとズラかりますか」
手を掴まれて、ぎゅっと引かれた。
「うん、ありがとう!」
震える足を叱咤して、倉庫から走り出た。
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