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23.俺のものになって1
「っとにもー、目が離せないんだから」
もう誰もいない教室で、机に突っ伏して息を整える。
「ヘンな奴に…ついてっちゃ…ダメだろ」
「うん…ごめん…」
レイジも息が切れてる。必死に探し回ってくれたんだろう。
「どして…俺がいたとこ…」
「委員会やってたとこから…ちょうど見えたんだよ。…永沢、だっけ?」
「うん」
「アイツと歩いてるなんて…ヘン、だから」
「うん」
「マジで間に合って……よかった───」
大きく息を吐きだして、頭にのしかかってくる。
香水のいい匂いがふわっと香ってきた。
さっきまでの嫌な臭いを忘れるように、レイジの香りを吸い込む。
「あーっ!お前の傍は落ち着くー…」
「じゃあ、俺と付き合おう?」
「ばーか。俺、男だっての」
「さっきまで男に襲われてたくせにー」
「っ…そーいうこと言うな!」
「蓮、冗談だと思ってるだろ。本気だよ、俺」
また、からかわれたんだと思った。
からかわれているのだから、笑ってやり過ごさないと。
レイジもすぐに、笑って、「冗談だよ、騙されたー」って。
「俺じゃ…だめ?」
首を傾げたレンジの頬に、髪がさらりと流れた。
切なく見つめる瞳。
───冗談じゃ……嘘じゃ、ないんだ………。
「……ヒロじゃないと、だめ?」
「え………?」
「ヒロって奴と会えなかったって言った日から、蓮はずっと自分が変なことに、気づいてる?」
机についた腕にあごを乗せて。顔を覗き込まれる。
「1年の時からずっと傍にいたのに、ずっと大切にしてきたのに……、俺はお前を、大切にし過ぎたかな…?」
「そんな……っ、俺だって大切だ!親友だって思ってる!」
「でも、俺にはそれじゃ足りないんだよ」
頬に、手が触れる。髪を弄ぶように触って、うなじに触れて、頭を引き寄せられた。
キスされる──って、理解した。
じっと見つめられて、動けない。
意識ばかりがそこに集中して、体が動かない。
「もっと大切にする。ずっと愛してあげる」
「……浮気、しない?」
「しないよ。お前とつるむようになってから、俺が女と遊んでるとこ、見たことある?」
「ない……」
「なら、俺のものになって。蓮───」
レイジの顔が、近づいてくる。
このまま受け入れたらきっと、俺は幸せになれるんだろう。
レイジだったら、キスできる。きっと。
それ以上のことも、…たぶん受け入れられる。
でも………
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