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29.一分の一番1

腕を引かれて、足がもつれた。 咄嗟に支えてくれたと思ったヒロは、一緒に床に崩れ落ちる。 強かに、肩をぶつけた。 小さく、いたっ、と声をあげた俺に、 「大丈夫ですか!?」 ヒロが焦って訊いてくる。 「肩、ぶつけた」 「すみません!ここですか!?痛いところありますか!?」 ぶつけたって言ってんのに、そんなにペタペタ触ってきたら……。 「痛いだろ、触んな」 「すみません!どこ痛いですか!?」 「ここ」 胸を押さえてみせると、えっ、と小さく首を傾げる。 「そこも打ちましたか?」 「お前といると、なんでか痛いんだよ。ばか」 ヒロは、分からないって顔してる。 俺だって分かんねーんだ。 簡単に理解されて堪るかよ。 「……うちの学校さ、俺の周りにヒエラルキーが発生してるらしくて」 って言い方は、ちょっと変か。 「ピラミッド…ですか?」 「そ。最上層、イケメン。第二層、チャラ男。第三層が、一般人っつってたかな。第四層が大人しめで、最下層がブサメン。別に俺がより分けた訳じゃないんだけどさ。んで、親友は最上層、友達は二層まで、俺を襲ったのは最下層の奴ら、な」 俺が伝えたいことを理解しようとしてるのか、ヒロは難しい顔をして頷く。 「最下層の奴らってのは、俺と直接話すことも禁じられてんだってさ。どんだけカリスマなんだよって話。…いや、姫扱い、かな」 転がったついでに、仰向けに思い切り伸びをする。 ぶつかったヒロの身体が、ビクリと震えた。 「そんなのが出来てることにも今まで気づかなくてさ…。俺、ずっと周りに甘やかされて生きてたんだ。レイジに守られて、会長に手助けしてもらって、陽太に優しさをもらって、クラスの女子にも忠告受けたり…。自分で気づかない内に、お高くて、やってもらうのが当たり前の姫になっちゃってたのかも」 ゴロンと転がって、ヒロのお腹の上にうつ伏せに乗り上げる。 「俺、やっぱり嫌だ。浮気とか、一番じゃないとか」 「え……?」 赤く染まった顔の、その目が何かを考えるように細められる。 「やっぱり、帰る前にこれだけ訊いとく。俺は、ヒロにとっての何番目?何人中の何番目?」 「え………?」 なんだよ。お前、え、しか言えねーの? ヒロは何を訊かれたか理解してないのか、こわばった顔のまんま暫く固まる。 その目を見つめて、瞳の奥までのぞき込んで……。 ……ああ、違うか。これじゃ、ヒロも戸惑う。 順番を、間違えてる。 「ヒロ」 頬を両手で包み込む。 目を逸らすな。ちゃんと俺を見て、言葉を聞いて。 お前の答えを、俺にちょうだい。 「俺は、ヒロに──恋してるんだ」

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