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図書館だから声をひそめているのだろう、その囁き声が耳に優しく響く。低すぎず高すぎない日比谷の声。何だか夢を見ているかのようだった。 「なら、こういうのはどうだい?」 「え゙っ!!??」 俺は思わず間抜けな声を出した。なぜなら、日比谷が手にした本は、どう見てもロリ向けのものだったからだ。表紙には小学生っぽい女子3人がこちらを見つめている。ピンク色の表紙で、あちこちにハートが散らばっている。 タイトル『本当に叶う♡おまじない集』 「な、なんでそれ……?」 「だって君、漫画とかイラスト入りのものがいいって言ってたじゃないか。この本はところどころに可愛らしい女児のイラストが挿入されているし、好みかと思って」 「いや確かに漫画が好きとは言ったけどさ、よりによってなんでそんなロリ系の……」 「えっ、君はロリコンではないのかい?」 「ちげぇよ!!」 ふいに大きな声を出してしまい、周りから冷ややかな視線を浴びた。慌てて口を押さえ、俺は日比谷に反論した。 「なんで俺がロリコンなんだよ」 「それは失礼した。先日、君が休み時間に読書しているのを見かけてね。ライトノベルだったかな、その挿絵にこのような女児が描かれてて。てっきりそういう性癖なのかと」 「違う!あの本はバトルがメインだからロリコンホイホイな要素はほぼねぇよ。あと俺はロリコンじゃない」 顔から火が出そうだ。まさか俺が昼休みに読書をしていたところを見られていたなんて。しかも日比谷に……。当の本人は至って真面目な顔だ。 友達もいないしどうせすることもないから、休み時間は読書をしている。文章だらけの難しい小説はあまり読めないが、ライトノベルは割と読みやすいため学校ではよく読んでいる。挿絵のシーンは周りにヒソヒソ言われたら恥ずかしいから注意して読んでたはずなのに……。 「ところでそのライトノベルはどんなストーリーなんだい?」 ふいに日比谷に質問される。優しい眼差しに胸が高鳴る。 「舞台は謎の生命体により地球が滅ぼされそうになり、戦争で荒れ果てた日本。その中で100歳になったじいさんばあさんが、研究者の実験である日突然10歳に若返ってしまう。研究者から謎の生命体と戦うように命じられた彼らは、それぞれの想いを抱えながら敵に立ち向かう――って話。バトルシーンが小説の文章だけでも迫力があるんだ」

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