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本を借り、俺達は図書館を後にした。たぶん図書館の人は「なんで男子高校生がおまじないの本を借りてるんだ?」と思ったに違いない。とりあえず俺が借り、さらっと読み終わった後2人で発表の内容を決めていこうということになった。 時計に目をやる。11時50分。もう昼だ。いつもなら家でゴロゴロしている。今日はこのまま解散だろうか。それは少し寂しい気がした。けど、上手くそれを口にできずにいた。 少し後ろを歩く日比谷が俺に声をかけた。 「君、これから予定はあるのかい?」 「……俺は、これから昼飯でも行こうかなって思ってる……」 その続きの言葉が言えない。何かに遮られている気がして……。 『あの、俺も一緒に、弁当食べてもいい……?』 『えー、志津くんと食べたら他のメンバーのやつらが文句言うからさー』 『てか志津くんって別に誰といても喋らないじゃん?1人で食べたらいいんじゃない?』 『正直一緒にいても楽しくないんだよな』 あの時の出来事が脳裏に浮かぶ。辛くて悲しい気持ちが込み上げる。だから俺は1人を選んだんだ。 ……けど、今何かが変わろうとしている。日比谷に出会って、こいつと話したい、もっと一緒にいたいって。そのためなら空回りしてもいいから手を伸ばしたいって……。日比谷はあの時のあいつらとは違う。断ったとしても、屁理屈を語り始めたとしても、酷いことを言うやつじゃない。そう信じたい。俺は過去を振り払うと両手をぐっと握りしめ日比谷を見つめた。 「その、よければ日比谷も、一緒にどうかな……」 言えた。コミュ障の俺が勇気を出した。日比谷相手だと、ついこの前までの俺ではありえない行動を取ってしまう。不思議な感覚だ。 日比谷はどう答えるだろう。やっぱり断るだろうか。唾を飲み込み返事を待っていると、日比谷の唇が小さく動いた。 「そうだね、時間も時間だし」 日比谷は相変わらずの真顔だが、俺の誘いを拒絶しなかった。心の中が一気に明るくなる。本当に初めてのことばかりで、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

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