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この辺りは割と栄えていて、飲食店もそれなりにある。俺は休日はめったに外出しないが、もしした時には昼飯に行くこともある。もちろん1人でな。と言っても店員と話すのが苦手だから食券のところばかりに行く。注文する時も店員に言わなくていいし、ついでに会計もその場で終わる。出来上がるのも早いし、番号が呼ばれたら取りに行って食事が終われば片付けて店を出る。周りはサラリーマンだらけだしコミュ障の俺にはこれが精一杯の外食だった。 しかし日比谷と一緒となると、もう少し落ち着いたところに行きたい。ファミレスはちょっと人が多くてうるさそうだし……。 「日比谷はどこがいいとかある?」 「……そうだな……こことかはどうかな?」 彼が指さしたのは全国にチェーン店を構える和食屋。流石日比谷、俺の好みをよくわかっている。ぱっと見たところ大して混んでもなさそうだ。俺達はその店に入ることにした。 店内に入ってメニューを注文した。今日は日比谷がいるからそこまでキョドらずに注文できた。俺が頼んだものは生姜焼き定食、日比谷はとんかつ定食。意外とがっつりしたもの食べるんだな、こいつ。 注文して間もなく食事が運ばれ、俺は生姜焼きに箸をつけた。肉が柔らかくて美味しい。そう感じるのはこの店の料理が美味しいからだけじゃなくて、日比谷と一緒に食べるからかもしれない。 ふと前にいる日比谷を見てみると、細い指で箸を支えそっと口に運んでいる。その姿はどこか儚くとても庶民とは思えない、身分の高い振る舞いに見えた。喋る時も手で口を隠して、きちんと飲み込んでから話している。 「あの……日比谷ってすごい箸の持ち方綺麗だな」 思わず口に出してしまった。それくらい綺麗な食べ方だと感じた。日比谷はやや目を丸くしていたが、すぐにまた細めて笑った。 「ありがとう。昔マナー講座を習っていたからかな。もう大半は忘れてしまったけどね」 なるほど、マナー講座か。これまた意外なもの習ってたんだな。正直彼の変人ぶりからしてまさかマナー講座を習っていたとは…… 「君、今僕はマナーがなっていないと思っただろう?」 「いっ!いやっ!そんなこと思ってないよ!」

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