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「ところで、この本でどう進めていくんだ?」
俺は早速本題に入った。日比谷は「面白いものができる自信がある」と言っていた。果たしてどんなものなのだろうか。
日比谷は声を出さずに笑うと、鞄から何かを取り出した。
「今回用意するのはこの3つ」
机の上に並べられたのは、さっきのあの本、日比谷のスマホ、そしてパソコン。でかい荷物持ってるなと思ったら、パソコンなんか持参してたのか。
「スマホとパソコンを使うのか?」
「そう。SNSを使っておまじないに関するアンケートを取ろうと思っているんだ」
「アンケート?」
「うん。そして、その結果について統計を取ろうと考えている」
日比谷は楽しそうに語っているが、俺には何がしたいのかわからない。アンケートってなんだ?頭のクエスチョンマークが見えたのか、日比谷はひとつひとつ“作戦”を教えてくれた。
日比谷の作戦はなかなか興味深いものだった。俺1人だったらめんどくさくて絶対やらないやつ。まるでどこかの専門家のようだ。ここまでして周りの目を気にせず自分のやりたいことを貫く彼が、純粋にすごいと思った。
「つまりSNSで人を募ってアンケートを取って、エクセルでグラフとかを作るってことだな」
「そういうことだ」
満足そうに日比谷は笑った。頭から音符マークを出してるくらい生き生きしている。そんな姿を見ているとこっちまで嬉しくなる。
「すごい、なんか面白そう」
「ありがとう」
そう言ってはにかむ日比谷。あれ、もしかして照れてる?そんなわけないよな。無表情なイメージしかなかった彼の笑顔。俺は独り占めしたいと思った。
「それで、何をすればいい?」
「うーん、僕はこれからSNSでアンケートを募集して、集計して表にまとめて……」
「待てよ、俺の役割ないじゃん!」
思った以上に大きな声を出してしまった。だって……
「僕のアシスタントをしてもらえたらそれだけで十分だよ。結構面倒な作業も多いし、これくらいは僕1人で……」
「やだ。1人で背負って欲しくないって言っただろ?それとも俺に手伝わせるのは嫌?」
俺は少し頬を膨らませた。何だよ、結局俺が手伝いたいだけで、日比谷にとっては邪魔なのかよ……。いらぬお節介だったかな……。一方で日比谷は数秒間黙った後、何かに堪えきれなくなったのか吹き出した。
「くっ……はははは……っ!」
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