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もし明日、世界が終わるなら

* 発表の日が刻々と近づいてきた。俺と日比谷は放課後によく打ち合わせをするようになった。たまにスマホで連絡をしたりするが、日比谷の文章は相変わらず難しい言葉が多い。直接会って話す時と同じだ。でも学校以外でも日比谷と繋がってる、それが俺にとって何よりの生きがいだった。 今日も空き教室で作業をしている。アンケートの結果が出揃ったようだ。俺は自分のパソコンを持参して慣れないタイピングをする。アンケート収集は日比谷がやってくれたから、ここからは俺もちゃんと仕事しないとって意気込んでたけど、やっぱり俺は機械の操作が苦手だ。俺はパソコンの画面を日比谷に向けた。 「日比谷、ここなんだけど……」 「ああ、これね。グラフはこれを使うと……。それからここをドラッグして……」 日比谷はひとつずつ丁寧に教えてくれる。まるで耳元で囁かれているかのような甘く優しい声。窓から入ってくる風に乗って、すぐ隣にいる彼から柔らかな香りが漂う。香水のように強い匂いではない、これが日比谷の香りなんだろうか……。呼吸をする度に鼻に入り込むそれが俺の心を余計に乱した。こんなに近くにいるのに、指1本も触れていない距離がもどかしく感じた。 結局日比谷があれこれと手を加える。もはや彼がやった方が早く終わるんだろうな。家で作業をしていてもしょっちゅうつまづいてはネットで調べたり、日比谷に聞いたりしている。 「悪いな、俺がやるって言ったのに機械音痴で」 「いいよ。僕だって君にやってもらってばかりじゃ手持ち無沙汰だし」 「もしかして、こういう習い事もやってた?」 「少しだけね」 大体の操作はマウスがなくてもできるんだ、と嬉しそうに話す日比谷。コピーアンドペーストはもちろん、1つ前に戻るとかデスクトップに戻るといった操作もショートカットキーを使って教えてくれた。細い指先でキーボードを打つ音が微かに響く。思わずその指に触れてしまいたいと思ったが、そんな勇気はないから黙って画面を見つめていた。 日比谷に手伝ってもらいながらグラフ作成を行っていると、ふいに言葉を投げかけられた。 「突然だが、もし明日世界が終わるとするなら、君は何をしたい?」 「えっ??」 急に謎質問をされた。話の内容が抽象的すぎる。そこがこいつのいいところなんだけど。 「またずいぶんベタな質問だな」

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