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「僕のくだらない理屈を聞かないのは勝手だが、今回は僕以外の人も発表してるんだ。それに周りには真面目に聞きたい人もいるかもしれない、それが君達の声で聞こえないのは大変もったいないからねぇ」 日比谷は今までにない悪巧みな顔を見せ、とどめを刺した。 「これから結構面白いことを発表するんだ。聞かないと後悔するかもしれないよ?」 目を思い切り細めてニヤリとする日比谷。まるでサイコパスのような。周りも完全に固まっており、不良はバツが悪そうな顔をしていた。そんなこと気にもせず日比谷はまた教壇へ戻ってきた。初めて見る日比谷の表情。背筋がぞくっとした。それは恐怖ではなく、そんな顔でさえも愛しいと思ってしまったんだ。 日比谷はこれまでも自分が納得いかない時は職員室に乗り込んだりしてたらしい。授業中でも教師に噛み付く時もあった。が、今回みたいに人のために注意をしたのは初めてな気がする。不良達もまさか日比谷に絡まれるとは思ってなかったのだろう。 しんと静まった教室。やや気まずいが気を取り直して発表を再開することにした。 「……で、では、今回紹介するのはこの本です」 と、あの本を提示した。『本当に叶う♡おまじない集』。タイトルは言うのが恥ずかしいので省略した。静かな空間が一瞬にしてまたざわついた。 「お、おまじない……?」 「えっ、超ウケる!」 「正気か……?」 ただただ驚くやつ、苦笑するやつ、腹を抱えて笑うやつ……それに関しては反論できない。俺も聞く側だったら絶対唖然としている。 ちょっと発表しにくくなった。わかってはいたものの恥ずかしい。内容はいいはずなんだけど、俺はやはり人前での発言に向いてない……。原稿、どこから読めばいいんだ?頭の中がこんがらがってきた。 すると、横にいる日比谷が俺の代わりに喋り始めた。 「ぱっと見ただけでは笑うのも驚くのも当然です。が、特に女子の皆さん、一度はやったことがあるのではないでしょうか?」 ちらっと横顔を伺う。鼻筋が通っていて、唇の形も整っている。何より、すごく楽しそうな顔をしている。好きなんだろうな、こういうの。俺は彼のアドリブに助けられた。 「僕は最近、おまじないに興味を持ちました。特に、本当に叶うと話題のおまじないに。なぜ叶うのか。それはおまじない自体に効果があるのか、自分の努力の賜物なのか。そもそも本当に叶うのか」

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