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案外、あの発表により少しだけ人との関わりができたのかもしれない。日比谷に恋をして少しずつ前向きになっている気がしてるんだ。
「色々ありがとうな」
短い文章にありったけの想いを込める。何に対するお礼か日比谷にはわからなくとも、ただこの声が届いて欲しかった。
俺より少し背の高い日比谷。見上げたその先には朝日のように眩しく、夕日のように美しい笑みがあった。気高くも切なさを帯びている表情に胸がいっぱいになる。真っ直ぐな髪が風に吹かれ、柔らかな香りが俺を包んだ。
「こちらこそ」
ああ、永遠にこの恋に落ちていたい。いつかその指に触れられるようになりたい。俺はズボンのポケットに手を入れ、指先で“それ”に触れた。
日比谷と俺の名前が書かれたその紙は、これからもっと幸せを運んできてくれる。俺はそう信じた。
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