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第3章 協力者

夏になった。今年の夏は特に暑いっていうのに、学校はケチだからなかなかクーラーを付けてくれない。やっと付けたと思いきや温度を高めに設定された。これで熱中症になったらどうしてくれるんだ。座っているだけで汗が滴る。 おまけにあんな姿を見せられたら……。俺はもやもやする気持ちを込め、下敷きで力任せに扇いだ。その理由は、数日前の出来事がきっかけだ。 *** 読書発表会からしばらく経ち、日比谷との接点が少なくなってしまった。会ったら話す仲ではあるが、俺も毎日毎日話しかけるほど器用な人間ではない。話せた日は嬉しいけど、欲張りな俺はそれ以上を望むようになっていた。 ある日の放課後、忘れ物をしてしまい教室に入ろうとした時、とんでもない光景を目にしてしまった。なんと、日比谷とクラスメイトが楽しそうに話していたんだ。あの日、日比谷は日直で残っていたんだと思うが、もう1人のやつも一緒に手伝いながら会話をしていた。 いや、別に日比谷が俺以外のやつと喋るのはいい。むしろあいつが人と話せるようになるのは嬉しいんだ。でも……あの笑顔が離れない。話の内容は聞こえないけど、俺に理屈を語ってる時のような生き生きとした表情。それを他のやつにも見せてたから……。 嫉妬なんて情けないな、俺。喜ばしいことだと、素直に思わなきゃいけないのに……。 日比谷と話していた男子生徒。名前は斎藤《さいとう》文哉《ふみや》。イケメンで背も高いし、スポーツもできる。こんな俺にも朝会った時は挨拶をしてくれる。明るい性格で誰にでも分け隔てなく話せるから、男女ともに好かれている。だから、変人と言われる日比谷とも普通に話せるんだろう。 日比谷と話せるのが俺の特権だなんて、俺は勘違いをしていたみたいだ。日比谷は俺がいなくても楽しく話せる相手がいる。そう思うと心が苦しくなった。俺は教室に入ることなく、その場を後にした。 *** それから毎日どんよりしている。夏の太陽も俺の暗さにドン引きしているみたいだ。授業も読書も何も手が付かない俺は、周りに聞こえないようにため息をつき机に突っ伏した。

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