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カラオケデート(仮)
*
「暑っ……」
思わず呟くほどに気温の高い日曜日。陽炎が揺らめくくらいだ。俺は指定された商業施設の前で待っていた。街ゆく人達は涼しさを求めて一目散に建物内に入っていった。
ドキドキしながら辺りを見渡していると、例の2人がこちらに向かってきた。
「あっ、かわしー!」
1人は大きく手を振りながら近づいていく。そしてもう1人はその横で静かに歩いている。斎藤と日比谷だ。今日は待ちに待った、斎藤が考案した謎のデート(?)だ。
「ごめんごめん、遅くなった!」
「いや、そんな待ってないから大丈夫だよ」
「てかかわしー暑かっただろそこ。中で待っててくれてよかったのに」
「それだとどこにいるかわかりにくいかなって思って……」
暑い暑い、と手で扇ぎながら、斎藤は俺の前で立ち止まった。半袖カッターシャツに短パン。頭にはキャップを被っている。腕や足は引き締まっていてかなり鍛えられている。こりゃ女子はたまらんだろうな。その隣に真顔で突っ立っている日比谷は、白いシャツに細身が際立つズボンを履いている。細い手首には腕時計が光っている。ものすごく色白で儚さを感じた。やべ、綺麗すぎて鼻血が出そう。
俺は服なんてないものだから、昨日慌てて買いに行ったんだ。とはいえ俺のセンスだから、ダサいシャツとズボン。2人には見合ってない気がする。
「かわしーは優しいなぁ」
「そ、そんなことないよ。それより悪いな、こんな遠くまで来てもらって」
俺達が集合しているのは俺の最寄り駅から電車で30分ほどの場所。日比谷や斎藤の最寄り駅からは1時間以上かかるらしい。2人は田舎に住んでいて、学校も時間をかけて登校しているそうだ。前回の図書館デート(?)の時も今回も俺の家の近くだから、なんだか申し訳ない。
「いやいやー、普段田舎に住んでるから、週末くらいは都会に行きたくてさ!な、ひびやん?」
「僕は別に田舎や都会にこだわりはないけどね」
「えー、つれないなー」
日比谷は斎藤に対してもクールな対応だ。中学の時からこんな感じだったのだろうか。
こうして奇妙な3人組によるデート(?)が幕を開けた。
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