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俺達が向かったのは、この商業施設内にあるカラオケ店。もちろん提案者は斎藤。「家からも学校からも離れてるから、知り合いもそんなにいない。おまけにカラオケだと他のやつらに邪魔されないからのんびりできる。休憩がてらに日常会話もできるし、話が途切れたらまた歌えばいいし。しかもひびやんと密室だぞ〜?何より、あいつの歌聞きたいじゃん!」などという理由で。密室って言い方やめろ。危ないことを考えてしまうじゃねぇか、全く。 でも確かに、日比谷の歌は気になる。斎藤は道中でも鼻歌歌ってたから容易に想像つくけど、日比谷ってそもそも歌なんか歌うのか?黙って聞いてそうだ。 店員に学生証を見せドリンクバーを選んだ後、案内された部屋に入った。ちなみにフリータイムである。どんだけ歌うつもりだ斎藤。 斎藤は部屋に入るなり曲選びを始めた。ノリノリだなこいつ。日比谷は真顔でメロンソーダを飲んでいる。お茶を飲みそうなイメージがあったが、ホント意外な面が多いな。 「そんじゃ、早速1曲目行くぜ!」 と言って斎藤が入れたのは超有名なポップスである。少し前に流行ってたドラマの主題歌だ。ドラマは見てないけど曲は色んなところで流れてるから知ってる。 曲が始まると、斎藤は勢いよくマイクを手にした。アップテンポな曲で、斎藤は歌い慣れてるのかめちゃくちゃノリがいい。歌詞も覚えているのか画面を見なくても歌えている。顔もよければ歌も上手い。まあモテるわな。 画面にはアーティストのPVが映し出されている。確かこの曲のおかげで有名になったんだっけ。爽やかな曲調で万人受けしそうな歌詞だ。映像が楽しそうに歌う斎藤とマッチしていて、ここに女子がいたらみんな好きになるだろうな、きっと。 4、5分経過し、曲が終わった。歌い終わった後のやり切った表情がこれまたイケメンだ。軽音部とかにスカウトされそうだな。ヴィジュアルもいいし。 「斎藤、歌上手いな」 「マジで!?嬉しい!」 「うわっ!」 俺の言葉に斎藤は嬉しそうに肩を寄せてきた。おいお前、これ女子にもやってるんじゃないだろうな?勘違いされるぞ。 「この曲街歩くと絶対かかってるよな」 「そうそう。俺元々このアーティストのファンだから、売れて嬉しいんだ」 斎藤はそう言って笑った。第1曲目に相応しい、緊張した空気を和ませるような曲だったな。

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