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「でも結局、何かと言い訳をして喋らなくなっただけ。努力もしてない。『積極性がない』『協調性がない』って言われても俺は1人を選んだ。文句だけ言って行動に移さなかったんだ」 自嘲気味に俺は呟いた。学年が上がっていくたびに俺の性格はひねくれていった。でも、今は……。 「そんな人間だからさ、こうやって日比谷と話したり連絡し合ったり、今日みたいに日比谷や斎藤と遊びに行けたのが夢みたいなんだ。すごく楽しかった。感謝してるよ、ありがとう」 俺は心からの笑顔を見せた。日比谷の前だと無意識で笑顔になれる。ずっと感謝の気持ちを伝えたかった。ひとりぼっちだった俺と出会ってくれた。この先も永遠に日比谷に恋をしていたい。 これを聞いて日比谷はどう思っただろう?「これだから君は……。人間というものは主観的になるから悩みが絶えないんだよ」とか言いそうだな。 でも、やっと伝えることができた。辛い過去も今の喜びも。肩の荷がおりほっとしていると、黙って聞いてくれていた日比谷が急に立ち止まった。 「僕は、内向的な性格は悪いことではないと思っている」 思わず俺も歩みを止めた。眼鏡の奥の瞳は俺へと向けられている。恥ずかしいのに目を逸らせないほどの強い力を感じた。 「君は大人しくて人と話すのが苦手だと言っているが、それは裏を返せば聞き上手ということではないか?」 「聞き、上手……?」 「幼少期から周りと上手く接することができず、嫌な思いをしてきた。でもその積み重ねもあって人の話を聞くのが上手いのではないだろうか」 俺が、聞き上手……?信じられない言葉だった。確かに今までは話し手より聞き手になる方が多かっただろうけど……。 「少なくとも僕に対してはそうだ。君は僕の長い理屈にもくだらない問いかけにも、嫌な顔せず受け答えしてくれた。それは、話を受け止めることに長けている証拠であり、君の才能だと僕は思うよ」 胸いっぱいに愛しさが溢れる。そんなこと、今まで一度も言われたことがなかった。俺のコンプレックスをたったの数分で洗い流す。日比谷は1ミリたりとも俺から目を逸らさない。涼しい風が優しく吹きつけ、日比谷のさらりとした髪をなびかせる。それをかき上げて彼はまた唇を開いた。 「それに、僕に読書発表会のことで話しかけてくれたり、連絡先を交換しようと言ってくれた君の、どこに積極性がないと?」

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