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思いもよらない言葉達が日比谷の口からこぼれていく。俺は話すことすら忘れて、彼に惹き込まれていた。
「川下。君はなぜ僕に声をかけてくれた?」
時が、止まった。そんな錯覚に陥る。日比谷の姿が夕日に包まれ、より一層美しさを帯びている。あらゆるものが水面に反射して輝いている。
「それは…………」
お前に惚れたから。喉元まで出かかった言葉を必死におさえた。だめだ、まだ言えない……けど、日比谷への想いが込み上げて今にも溶け出してしまいそうだ。
もしそれを口に出したら……日比谷は俺から離れてしまうかもしれない。また俺はひとりぼっちになるかもしれない……。それが怖くて言えなかった。代わりになる言葉を探していると、日比谷に遮られた。
「……いや、やめておこう。君の才能を褒めているのに、これじゃ尋問みたいじゃないか」
真顔から一変し、静かな笑顔を見せた。胸の鼓動が鳴り止まない。日比谷が何を考えているのかわからない。でも彼の声が、瞳が、唇が、そして手が……全てが愛おしく感じる。
しばらく沈黙が流れた。日比谷はずっと口を閉ざしている。何も言わず俺を捉えている。気まずい気持ちがある反面、何かを期待する自分がいる。胸が苦しいのにどこか甘くて、ほろ苦いこの想いに酔いしれていたい……そんなことすら思った。
「僕は、高校生活や人間関係などどうでもいいと思っていた。自分という存在を消して、壁のように第三者の視点で世界を見ていた」
日比谷はぽつりと語った。彼の言葉ひとつひとつに心を揺さぶられている。俺はその続きを待った。
「……君に声をかけられて、共に作業をして、斎藤と3人で出かけて……柄にもなく思ってしまったよ」
少し口を噤んだ後、日比谷は再び言葉を発した。
「嬉しかった。君という友人がいてよかった」
……嘘だろ?あの日比谷が、人に興味なさそうな日比谷がそんなこと……。別人にすり替わったんじゃないかってくらい目の前の光景が信じられなくて、胸が熱くて立っているのもやっとだ。夢だよな?そうだ、きっと夢なんだよ……。
「日比谷…………っ」
消えそうな声で俺は名前を呼んだ。何か言わないとこの夢が覚めてしまうような、日比谷がいなくなってしまう気がして……。
「それとも、僕が君の友人だなんて、嫌かい?」
「違う!俺だって……俺だって嬉しい……っ!」
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