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精一杯の感情を伝える。なんでそんな、甘える子猫のような切ない顔をするんだよ……。抱きしめたくなる衝動に駆られたが、俺は懸命に堪えた。 俺の返事に日比谷はゆっくりと唇を緩めた。それは本当に美しくて、見る人全ての心を動かすほどのものだった。きっと日比谷は俺を“友人として”認めてくれたのだろう。俺というやつは欲張りで、友達以上を求めてしまっている。 夕日が俺達の影を映し出す。2人は指1本触れ合っていないけど、影と影は少し重なり合っていた。心で感じる温もりと時の流れ1分1秒が、これは夢じゃないと教えてくれた。今日ははまた眠れぬ夜を過ごすことになりそうだ。

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