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ひびやんに呼ばれるとは何事だろう。こんなこと今までに一度もなかった。変なことでも思いついたのかな。いやそんなことでいちいち呼ばないよな。何か悩みがあるんだろうか。
「それで、何かあった?」
本題に入ろうとすると、ひびやんは少し黙った。いつもの表情より若干曇って見える。もしかしてかわしーと喧嘩でもしたのか……?いや、そんなはずはない。今日の昼休みだって2人が普通に喋ってるのを見かけたし。日曜日のあの後、変化があったとか……?
あれこれと考えていると、ひびやんが口を開いた。
「君、この前のあれ、仕組んだだろう?」
「あれ?」
「日曜日のこと。川下と3人で出かけた日」
ギクッと体が動いた。流石ひびやん、やはり俺の嘘に気づいてしまっていた。でも「かわしーがひびやんに気があるから〜」なんて言えるわけないし、仕方がないんだよ。
「別に君のことを責めているわけではない。その、誘ってもらって、嬉しかったし……」
一瞬聞き間違いかと思った。あのひびやんが真っ直ぐな気持ちを伝えるなんて……。
「君から誘われた時になんとなく勘づいてたんだ。何か企んでるのかな、と。嫌な気もしないから特別探ろうとも思わなかった。……なのに、川下のことを考えると……すごく……」
だんだんと目線が下がっていく。ひびやんに何があったのかはわからないけど、かわしーが関係していることは伝わった。
「あの日、帰り道で……そんなこと、言われて……。僕も、今までのことが頭に入り込んできて、つい素直な気持ちを……。なんで、僕がこんな、想いなのかって……。わかってる、他人がこうなってたら、川下は絶対、その人のことを……。でも、僕自身のことになると……」
言葉が途切れ途切れになる。いつも切れることなくはっきりと喋るひびやんが、こんなにも悩んでいる。
「ひびやん……」
彼は必死に言葉を繋ごうとしている。断片的に話す彼は初めてだった。言葉に詰まることもなかったのに。俺には具体的に何があったのかは頭に入ってこない。だけど、かわしーとの間で何かがあったのは間違いないだろう。
「ひびやん、落ち着いて?ほら、座って座って」
焦るひびやんを近くの椅子に座らせる。呼吸が荒い。俺は冷静なふりをしているけど、本当は見たこともないひびやんの姿に驚いている。でも、“あの時”のような憔悴した様子ではない。
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