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「かわしーと、何があった?」 そう問いかけると、少し間があった。余裕のないひびやんのこの表情。俺も椅子に腰掛け、なるべく目線を合わせた。すると、ようやくひびやんが話してくれた。 「……最初に会話をした時や、読書発表会の件で声をかけてくれた時は、彼にしては積極的だなと感じた。ただ、そこまで気にとめてなかった。そこから、どんどん距離が近くなった気がして……。彼の言葉や態度が離れなくて……。僕が客観的に、第三者として、傍からこの様子を見たらすぐに『ああそうだ』ってわかる。けど……自分のことになると……」 小さく呼吸をした後、ひびやんは小さい声ながらにも心にある想いを叫んだ。 「自信がないんだ」 教室に木霊するかのような彼の想い。彼は珍しく顔を逸らしていた。頬はほんのり赤く染まっている。色白だから余計にわかりやすい。男の俺から見ても綺麗だ。改めて整った顔立ちだなと感じた。 ひびやんはかわしーからの想いに自信がないという。俺は知っている……かわしーはひびやんのことが好きなんだよ。だから自信持って。そう伝えるのは簡単だ。でも、それは俺が言うべきことではない。かわしーが直接伝えるものだから、その言葉は心の中に閉まっておいた。 「そっか。じゃあ、ひびやんはかわしーのことどう思う?」 俺はそう問いかけた。攻めた質問だと自分でも思う。ひびやんは逸らしていた目線をゆっくりと俺に戻した。 「……これがなんなのか、僕にはわからないんだ。川下といると、僕の全てが許されたような、心が戻ってきたような、そんな気持ちになる。つい素直になって、声を聞くたび、彼が笑うたびに胸が痛くなるのに……。“あの時”みたいに嫌な感情はなくて、優しくてすごくあったかくて……」 「斎藤。この気持ち……なんなんだろう」 ひびやんが答えを求めるように俺を見つめる。目は潤んでいて、今にも涙がこぼれそうだ。濡れた柔らかそうな唇が震えている。思わずドキッとしてしまうくらい甘い表情。今までひびやんをバカにしてきたやつだって、こんな顔を見たら絶対に惹き込まれる。何より、この光景ををかわしーに見せたいくらいだ。 なんだ、この2人は両想いほぼ確定みたいだ。俺が立ち入る必要もなかったかもしれない。いらぬお節介だったかな。俺は昔から困っている人を放っておけないから……。特に、ひびやんのことになるとどうしても……。

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