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第4章 過去と現在

『嬉しかった。君という友人がいてよかった』 3人で遊んだ後、帰り道での言葉。今思い出すだけでもドキドキする。夢見たいで夢じゃない。あの光景を鮮明に覚えているから……。 あれからしばらく経ったが、俺と日比谷の関係は相変わらずだ。毎日話すほどではないけど、昼休みとかにたまに話す。この前は突然「君は犬派かい?それとも猫派?」と聞かれたから「どっちも可愛いと思うけど、強いて言うなら犬派かな」と答えた。すると、「ほう、君は犬派なんだね。ところで、この手の質問はなぜ犬や猫ばかりなんだろう。ハムスター派やインコ派やヘビ派などもいるだろうに、なぜ犬や猫に限定しているんだろうね」と言われた。いや知らねぇ……てか考えたこともない。「ペットは犬や猫がオーソドックスだからじゃない?」と答えておいた。あとヘビ派って急にマニアックだな。 ……まあ、そんな感じで日比谷の変人ぶりは通常運転だった。あいつのそんな一面も俺は大好きで、何気ない日々が幸せだった。 でも、俺はあの日の素直な日比谷が忘れられず、もっと深い仲になりたいと思うようになっていた。 ある日の昼休み。教室はガヤガヤと騒がしい。俺は日比谷と他愛もない話をしていた。日比谷は楽しそうに語っている。 「中学までは社会という教科にひとくくりにされているが、高校からは地理や日本史、世界史、政治、経済など色んな科目に分かれている。理科に関しては化学・生物・物理・地学。正直、高校のうちに細分化する必要はないと個人的に感じている。細かくやりたい人のために、大学というものがあるじゃないか」 「まあ、言われてみれば確かに……。というか、俺はめんどくさくてどれもやりたくないけどな」 正直そんな多くの教科を一気に勉強できるわけないだろ、と思う。教える教員は教科ごとに違うのに、生徒は全て学ばないといけない。日比谷、その意見をぜひ全校集会で言ってくれ。たぶん大多数のやつは賛同するぞ。 俺達はそんなふうにやり取りをしていた。いつもと変わらない。今日も普通に1日が過ぎると思っていた。 ふと、日比谷の肩にゴミが付いていることに気づいた。ホコリか何かか?取ってやらないといけないな。そう思い手を肩に近づけた。その時――

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