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思い切り体を避けられた。日比谷は今まで見せたこともない、恐怖と憎悪の表情を浮かべている。何かに怯えているかのような、不快感を表すような……。慌てて俺は手を戻した。
「な、に…………」
唇を震わせながら俺を見る日比谷。今にも泣きそうな顔で……。
「えっ、その、肩にゴミが付いてたから、取ろうと思っただけで……」
正直、なんでそんなに怖がられているのか、顔を引きつらせているのか……俺にはわからない。俺、無意識に傷つくことをしてしまったのかな……。初めて見る日比谷に戸惑いを隠せない。
「あ、あのっ、変なことしようとしたわけじゃないんだ……ごめん……」
謝るしかなかった。何に謝っているかもわからないけど、とにかく彼を落ち着かせたかった。
少しの間沈黙が起こる。これ以上何を言えば日比谷が笑顔になるか、考えても考えても答えは出ない。
次の言葉を必死に探していると、ようやく日比谷が小さく口を開けた。
「そうかそうか、すまないね」
そう言った彼は笑っていた。でも目が笑ってない。心からの笑みじゃないことは俺でもわかった。
まもなく昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。それは虚しくも俺達を散り散りにした。言葉をかけることもできず、俺は逃げるように背中を向けた。
数日後。あれ以来俺は日比谷と話せていない。ついこの前までくだらない話で盛り上がっていたのに。何が原因だったのかわからず、どうしても声をかけることができずにいた。日比谷の姿を見るたびすぐ駆け寄りたくて、声が聞きたくて仕方がないのに、体が固まって言うことを聞かなかった。
家に帰ってもそのことばかり考えてしまう。ベッドの上で横になっても頭の中がぐちゃぐちゃだ。手を伸ばしてみる。ゴミを取ろうとして避けられた手。……もしかして、俺の好意が気持ち悪いと感じたのだろうか。俺に触られることに抵抗があったのではないか……。あの目は間違いなく俺を跳ね除けていた。
『君という友人がいてよかった』って発言は、あくまでも友達として。俺がそれ以上の感情を表に出しすぎて、日比谷が引いてしまったのかも……。あの日もきっと、俺が触ろうとしたから……。好きという気持ちが強すぎて周りが見えてなかった。日比谷の気持ちをちゃんと考えられてなかった。心がヒリヒリと痛み、涙が出そうになった。眠ることもできず、じっとすることができなかった。
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