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俺の視界にスマホが映る。意を決して手に取り、あるメッセージを送った。ここ何日も送ろうとしては迷ってできなかった。この辛い思いをどうにかしたい。相談できるのはただ1人だ。 10分後、通知音が鳴った。慌ててスマホを取ると、その人から返信が来ていた。深呼吸をして、俺は通話ボタンを押した。2コールで出てくれた。 『あ、もしもし?』 「もしもし。ごめんな、夜遅くに」 『いやー全然大丈夫だよ!どうした?』 電話越しでも爽やかで明るい声色。出てくれたのは俺の友人の斎藤だ。俺の恋を応援してくれて、3人で遊べるように計画を立ててくれた。秘密も守るし、気遣いもできる。話し始めてまだ間もないのに、俺は斎藤を頼りにしているんだ。 今回、日比谷のことで相談があると話を持ちかけた。斎藤は今夜電話しようと言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。 「実は、日比谷のことなんだけど……」 俺は日比谷に避けられているかもしれない、という経緯を話した。中学の同級生である斎藤なら、何か知っている可能性もある。 辛い胸の内を吐いた。俺の気持ちがバレてしまった、日比谷に拒否されてしまったのなら、もう二度と話せない……それが怖い、と。 斎藤は終始黙って聞いてくれた。電話口から聞こえる相槌の声が、俺の心を落ち着かせてくれた。俺が話し終わりしばらく間があった後、斎藤が口を開いた。 『まず、ひびやんがかわしーの想いに気づいたかどうかっていうのは、俺にはわからない。けど、警戒してるとか気持ち悪く思ってるとか、そういうのではないと思う』 そう言われ、ほんの少しだけほっとした。斎藤が俺に気を使って、そう言ってくれているだけだとしても、優しい声で不安感が少しずつ和らいでくる。 「そう、だといいな……」 『うん、それは大丈夫』 “大丈夫”。なぜ大丈夫なのかわからなくても、斎藤に言われるとどこか安心した。ただ…… 「でも、俺の手が触れようとすると、明らかに俺を避けた。それだけは見間違いないんだ……」 『…………』 斎藤が黙る。もしかして何か心当たりがあるのだろうか。 「……やっぱり嫌われてるのかな」 『違う。むしろ好意的だ』 「それは、日比谷が言ってたのか?」

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