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我ながら女々しいなと思う。そんなこと斎藤に聞いてどうするんだ、って。日比谷に嫌われてないという根拠が欲しかった。大丈夫と言われながらも、確信を得たい。
『3人で遊んだこと。誘ってくれて嬉しかったって言ってた。それも最近の話。そこから何も変わったことしてないのに、ひびやんが急にかわしーを嫌うなんてことないと思う』
心が揺さぶられる。嬉しかった……俺と同じ気持ち。嫌われてなくてよかったという安堵と、じゃあなぜ避けた?という不安がせめぎ合う。
「あの日俺の手を避けたのは……」
『…………』
再び起こる沈黙。何か把握しているかのように思えた。怯えた日比谷の顔が頭に焼き付き、負の感情がまだ拭えない。
「中学で、何かあった……?」
聞いてはいけない。そう思っていてもその言葉を口にしてしまった。斎藤の息を飲む音が聞こえた気がした。
斎藤はなかなか答えない。きっと、何もないことはないんだ。中学時代の日比谷を知っている斎藤。そこには俺の知らない世界があって、何かが起こっていたんだ。
部屋の時計の針がやけに響く。1分1秒の時間が怖いほど身に染みる。スマホを持つ手が震えている。
長いのか短いのかわからない時間が経過した後、斎藤がその沈黙を破った。
『……避けた、ってのはかわしーだからじゃない』
俺だからじゃない。なら、例えば斎藤が俺の立場だったら……?
「他のやつが同じことをしたら……?」
またしても静まる。だめだ、これ以上斎藤を追い詰めてどうする。加速する胸をぎゅっと押さえて自問自答をした。
考えてみろ、俺。ここで斎藤が本当のことを話せば……それは、斎藤は口が軽いってことになるぞ。斎藤は俺のことも内緒にしてくれている。だから、日比谷のことも知っていたとしても、言うわけがない。
それに、自分のために日比谷の傷をえぐりたいのか?それを日比谷は望んでいる?日比谷が望んでいるのは、今までどおり変な会話をして笑ってあげること。普段どおり日比谷と話そう。それが解決策だと俺は思った。
「斎藤、ごめん。言わなくていいや。それは斎藤の口から聞くべきものじゃない。俺、どんなことがあっても日比谷が好きだから……。今までと変わらず話すようにする」
『かわしー……』
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