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ざわついていた周りも一気に日比谷の方に目を向けた。
「どうした?」
「何があったの?」
口々にそう言うクラスメイト。全員いつもと違う日比谷に驚きを隠せずにいる。近くにいたやつが問いかけた。
「おい、何怒らせてるんだよ」
「いや、ちがっ、俺はただ、新しいおまじないの話聞こうと思って、話しかけただけで…………」
肩に触れた男子生徒も硬直している。彼は悪くない。悪くないんだ……。このままじゃ日比谷が……日比谷が悪者になってしまう。急に怒り出した変なやつだって、いじめられてしまう……そんなの嫌だ……!
自分の手のひらを見てみる。小刻みに震えている。ああ、怖いんだ。今の日比谷の姿が。そして、日比谷が嫌われてしまうことが……。
行かなきゃ。俺、今朝心の中で言ってただろ?何があってもそばにいる、日比谷を傷つけないって。陰キャのくせに?コミュ障のくせに?出しゃばるなって?そうだよ、俺は陰キャのコミュ障だよ。だからこそ、たった1人の大切な人を守りたい。そのためならなんだってするんだよ……!
ズボンのポケットに手を突っ込む。ちゃんと“あれ”がある。俺が日比谷を好きだって証。まるでお守りのような存在になっていた。
俺は決意を込めて席を立った。そして渦中へと歩いていった。視線が俺へと移っていくのが怖いけど、もうそんなことどうでもいい。俺は日比谷の横に立ち、男子生徒と向き合った。
「ごめん、実は日比谷、今おまじないを試してる真っ最中なんだ」
唇を必死に動かし、俺はそう言った。バカげてるよな?でもいいんだ。俺はいい、それより日比谷を助けたかった。
「『1日中指1本、誰にも触れなかったら願いが叶う』ってやつ。それで今日は人に触らないようにしてたんだ」
辺りがしんと静まる。言い訳にもほどがある。でもこれが、俺の精一杯だった。
「けど、誰も悪くないよ。そんなのわからないもんな」
俺は懸命に笑顔を作った。俺は嫌われたっていい。どうせもう嫌われてるから。慣れてるから。それよりどうか、日比谷が嫌われませんように……そう願った。
手に汗がにじむ。怖くて俯きそうになっても、俺は耐えて前を見つめていた。
すると、周りがどっと笑い始めた。
「そんなことかよ!」
「なぁんだ、びっくりしたー」
「喧嘩始まったのかと思ったじゃん!」
爆笑の渦。予想もしていなかった反応に、俺はこの後の言葉が思いつかなかった。その時、まさかの人物が話に加わった。
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