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「俺もこの前そのおまじないやったんだ!でも最後の最後で、下校中に校長先生に抱きしめられて……パァになっちゃったよ」
声のする方を見ると、それは斎藤だった。人気者の彼の発言により、さらにクラスメイトの笑いを誘った。
「文哉までやってんのかい!」
「てか校長に抱きしめられるって何があったんだよ!」
「帰ってたらいきなり『斎藤く〜ん、君イカしてるね〜』って抱きつかれて、尻とか触られて……」
「やだなー、最悪だなそんな帰り道」
「セクハラじゃん」
教室の淀んだ空気が元の明るい雰囲気に戻った。日比谷に触れたこの男子生徒も、怯え顔からみるみる笑顔に変わっていった。
「なんだ、おまじない中だったのか!ごめんな、邪魔して」
すると、ずっと俯いていた日比谷がゆっくりと顔を上げた。
「僕の方こそすまなかった。僕の勝手な事情で失礼な言い方をしてしまった」
そう話す日比谷の顔は、いつもの余裕そうな表情だった。
「いいよ、それよりあのおまじないの本、どこにあるんだ?あれ借りたいんだけど」
「あれは市の図書館にあってね……」
その後はクラスも落ち着き、何事もなかったかのように昼休みが終わった。俺のやったことが正しいかどうかは不明だ。そもそも正解なんてないのだろう。日比谷がどうか傷つかずに済むように……俺はできる限りを尽くしただけだ。
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