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どうやったら死ねるか、毎日考える。お腹は日に日に大きくなるのに、周りには誰もいない。助けてくれる人も、話を聞いてくれる人もいない。全て捨てて逃げたことを、今さら後悔してももう遅かった。 心に暗闇を抱えて道を歩いていると、脇に大きな木が立っていた。それはとても立派な根を生やし、堂々と母を見守っているようだった。風に乗って、1枚の葉っぱが母の肩に落ちてきた。だいぶ色褪せた枯葉。でも、その葉だって青々としていた時期もあるだろう。落ちていく最後に母の元へやってきた。その時、お腹の子供が強く蹴った。母は改めて命を感じたという。生きようとしている我が子を殺すことはできない。そのために私も死ねない。1人でだってこの子を育てられる。この子と2人で強く生きていこう、と決意した。 こうして生まれたのが僕だった。名前は“一葉”と付けられた。母が16歳の時だった。

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