83 / 122

一葉の過去・中学校時代(一葉 side)

中学生になった。相変わらず僕はクラスで馴染めずにいた。というより、どうやって人と話すかがわからなかった。 「日比谷くんって暗いよね」 「喋ってるとこ見たことないな」 「根暗で気持ち悪いよね」 「この前ペアになったんだけど、無愛想で全然喋ってくれなくてさ」 「何それ?感じ悪くね?」 聞こえてくる陰口。傷つくけど正直慣れた。生きている意味もないのに、無理やり生かされている。僕は操り人形のようだった。 中学3年の時。この頃、母親の精神状態が非常に悪かった。心療内科に通い、薬もたくさん飲んでいた。それなのに酒を飲むのを止めない。だから余計悪化していた。 家に帰ると、リビングで母親が横たわっていた。部屋には空の缶ビールが散らばっている。 「ただいま」 そう言って鞄を置くと、母親は閉じていた目をうっすら開けた。 「ちょっと……しんどいのに起こさないでくれる?」 「ご、ごめん……」 この日は不機嫌なようで、帰ってくるなり怒られた。最近は僕に当たることが多い。髪もボサボサで、とてもこれから夜の町に行く人とは思えない。母は日頃のストレスや不規則な生活、周りからの心ない言葉で精神を病んでいるのだった。 中学に上がるとテストでやたら順位がつく。僕は毎回1位だった。どの教科でも全てトップ。先生達には褒められ、どんな進学校でも行ける、将来有望だと言われた。でも僕はちっとも嬉しくなかった。いくら勉強ができようが、僕には何も望みがない。生きがいもない。 受験生だから一部は勉強モードになっていた。僕は全くもって興味もなかったが、塾の先生は難関校を勧めてくる。結局断ることもなく、淡々と勉強をしていた。 5教科以外の科目もそれなりにできた。体育もそこそこで、短距離走では誰かに負けることなんてなかった。習い事の影響で音楽も美術もある程度の教養はある。授業中はやたらと先生に褒められることが多かった。 そんなことが続くと、周りのクラスメイト達はさらに僕を嫌った。 「なんなん?あれ」 「ちょっと勉強できるからって、調子に乗りやがって」 「陰キャのくせに」 「ムカつく」 僕を責める言葉が痛いくらいに突き刺さる。慣れていても、心は痛いと叫んでいた。ただ、ここまではまだいい方だった……。

ともだちにシェアしよう!