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その後、投票の結果が出た。俺は生徒会長になれなかった。隣のクラスの人が当選した。正直自信があったからショックだった。クラスのみんな俺に入れてくれるって言ってたから……。そりゃあ全校生徒はたくさんいるから落ちても仕方がない。でもまだまだ子供だった俺は、驚きと悲しみを隠せずにいた。 さらに衝撃的な出来事があった。結果発表から数日後のこと。俺はたまたま、クラスメイト達がこそこそ話しているのを遠くから聞いてしまったんだ。 「文哉、やっぱり落ちたな」 「そりゃそうだよ、誰があいつなんかに入れるんだよ」 「ざまぁだよなー」 その言葉が耳に突き刺さった。痛くて聞きたくもないのに、俺の気持ちなんて無視して入り込んでくる。 「あいついつもリーダーシップとか発揮しててうざいんだよな」 「そうそう、毎日毎日サッカーとか誘ってきて迷惑なんだよ」 「しかもさ、前なんて佐々木までサッカーに連れてきたよな。いつも1人で変な絵描いてるやつ」 「あー、あの陰キャだよな。あいつ連れて来たら雰囲気悪くなるからやめて欲しいぜ、全く」 「俺らが佐々木をいじめてた時もかっこつけて止めにきやがって。弱いものを助ける正義のヒーローってか?」 「酔いしれてんじゃねぇよ、偽善者が」 俺はその場で崩れ落ちた。友達だと、仲間だと思っていたのに。そう思っていたのは俺だけだったんだ。 昼休みのサッカーも、みんな嫌だったんだな。俺を生徒会長にする気なんてなかったんだな。 困っている人を助けたい。その思いは正義ヅラした偽善なのか……。俺は、偽善者なのか……。 みんな、俺に投票してくれるって言ってたのにな。舞い上がってた俺がバカみたいだ。 初めて感じる胸の苦しさ。どうしようもない腹立たしさ。自分の惨めさ。自分の中でぐるぐる蠢いていて、俺はしばらく立ち上がることすらできなかった。 その傷は、何年経っても癒えることはなかった。

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