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かわしーに反抗されても、俺は笑いを堪えきれなかった。2人が両想いなのはもう秒読みだった。だから、付き合い始めたって聞いた時もさして驚かなかった。ただただほっとした。2人が幸せでよかった。心からそう思う。 「2人が付き合えてよかったよ。両想いだろうなとは思ってたけど、こうして目の当たりにすると幸せオーラが伝わってくるから」 かわしー、ありがとう。ひびやんを救ってくれて。そして2人ともありがとう。俺を成長させてくれたのは、紛れもなく2人のおかげだ。 小学校の同級生のあの子が浮かぶ。元気にしてるかな。俺のこと覚えてくれてるかな。もしどこかで会えたら……今度はもっと色んな話をしたいな。 かわしーとひびやんは顔を見合わせて笑った。 「こっちこそ、斎藤のおかげで一葉と付き合えた。ありがとう」 「僕からも、ありがとう。志津との仲を応援してくれて。中学の頃から、君にはお世話になり続けているよ」 感謝の気持ちはいつもらっても心地いいもんだな。偽善者って言われるのが怖かったけど、自分にとっての善は起こさなきゃいけないってわかった。というか…… 「……ふっ、お互い名前呼びしちゃってさ!可愛いな」 「なっ!こ、これは、呼び間違えただけだよっ!」 またしてもかわしーを照れさせてしまった。で、その横でまた赤面するひびやん。かわしーだけだよ、ひびやんにそんな顔をさせられるのは。 高校3年の夏。俺自身にとって、そして2人にとってもいい思い出ができることだろう。俺は見えない写真を心のアルバムにそっと入れ込んだ。

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