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帰り道。俺は軽い足取りで通学路を歩いていた。 「嬉しそうだね、文哉くん」 隣でそう呟く女の子。名前は由梨《ゆり》。俺のひとつ歳下の彼女だ。サッカー部ではマネージャーをしている。 「うわー、由梨にまでバレるくらい顔に出てる?」 「バレバレだよー。鼻歌なんか歌っちゃって」 そう言って由梨はにぱっと笑った。由梨は笑顔が可愛い。嘘偽りないって感じるから。風に吹かれて、由梨の2つ結びをした髪が揺れる。緩いカールのかかった髪から優しい香りが漂う。 「何かいいことあったの?」 「まあな。俺、またカップル成立させたんだ」 「えー、すごい!文哉くんに相談すればみんなカップルになってるね。将来は結婚相談所で働けるんじゃない?」 「それもいいな。俺勉強できないけど、雇ってもらえるかなぁ」 「勉強は関係ないでしょー。でも会社を経営するなら、ある程度の知識はいるかも」 「マジかよ……先は遠いな……」 なんて他愛もない会話をしていた。由梨はいつも俺の話を頷きながら聞いてくれる。相手の得意分野や好きなことを引き出し、会話に持って行くのが上手い。部活でもマネージャーの仕事もきちんとするし、部員のケアも欠かせない。俺の自慢の彼女でもあり、誇れるマネージャーでもある。 「俺さ、こうやってカップル成立させるたびに、お節介だったかな、迷惑だったかなって思ってた。自分の利益を求めてやってるだけなんじゃないかって。でも俺はその人達に親身になりたい。その気持ちに嘘なんてないから……それは偽善じゃないって思いたい」 この数ヶ月で感じたこと。ひびやんとかわしーが気づかせてくれた。俺は俺の意志で生きていたい。 それを聞いた由梨が、笑顔から真面目な顔つきになった。 「うん。文哉くんのそれは嘘じゃない本心ってわかるもん。例えメリットがなくても……いや、その人達のためになることが、文哉くんにとってのメリットって、そう感じてるんだよね」 少し上目遣いで俺を見つめる。瞳が間違いなく俺1人を映し出している。その表情全部に俺は惹かれてるのだろう。 「それってもはや、偽りの善じゃないよ。ただの善。それに、偽善者って言ってくる人って、悪口言うだけで何もしてないんでしょ?偽善すらしてない。比べ物にならないよ」

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